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623:『HASSELBLAD 907X 50C』

2020年10月06日

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F11 / シャッタースピード:1/180秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

世の中にはカメラを愛する者にとって永遠の憧れとも言える不変的なカメラが存在します。ニコンやキヤノンのフラッグシップ機、M型ライカ、そしてハッセルブラッド。月にも行ったスウェーデン生まれのカメラは、かつて「ハッセルが使えないとプロではない」と言われるほどプロフェッショナルの現場から信頼されていました。そしてカメラのフィルムがデジタルデータへと変わった現代もハッセルブラッドHシステムはプロ御用達のカメラとして知られています。しかしながらハッセルブラッドと言えば1600F、500C、SWCなどを思い浮かべる方も多いことでしょう。かく言う筆者もハッセルといえば「500シリーズ」と即答するほど“あの形”好き。とある旅写真がきっかけで写真・カメラの世界にどっぷりとはまり込んだのですが、実はその写真を撮ったのが500C+銀鏡筒プラナー80mmの組み合わせだったという理由もあります。

前置きが長くなってしいましたが、今回ご紹介する機種は『HASSELBLAD 907X 50C』。憧れのハッセルブラッドの“あの形”が中判デジタル機で帰ってきました。極薄ボディにデジタルバックを組み合わせたコンパクト設計ながら、ラージフォーマットらしい緻密な描写を楽しめる至極の一台。その描写を是非ご覧いただければと思います。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F8 / シャッタースピード:1/320秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

青い空と独特な岩肌の景色。絶景写真とも言える一枚に同僚からは「どこで撮ったの!?」と聞かれましたが、実は都内からも手軽に行ける神奈川県。1枚目の写真はあえて特異な景色の写真にしようと磯の岩しか写らないアングルを選んでスナップしたのですが、まるで何処かの惑星にでも来たかのような景色です。

2枚目は雄大な景観に絵筆を走らせていた姿を景色と一緒に撮影したカット。この日は晴天でコントラストが高く、波に削られた崖の造形がクッキリと見えていました。近場とは思えないダイナミックな自然の景色に、しばしシャッターを切るのを忘れてしまったほどです。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F8 / シャッタースピード:1/800秒 / ISO:200 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/360秒 / ISO:200 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

海沿いにはたくさんのネコが居て思い思いに過ごしています。茶トラの子は歩道の脇で居眠り。カメラを近づけても慣れているのか全く気にするそぶりを見せずスヤスヤ寝ています。デジタルバックのモニターをチルトさせ、地面ギリギリでシャッターを切ったのですが、この撮影スタイルが『HASSELBLAD 907X 50C』の真骨頂とも言える使い方。まるでフォーカシリングスクリーンを上から覗き込みながら撮っているような感覚になります。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F11 / シャッタースピード:1/250秒 / ISO:200 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

少し秋めいてきた緑の稜線と青空が気持ちいいカット。これは本機の解像力を是非ご覧いただきたいと思い、画像リンク先は縮小なしの8272×6200pixで掲載しています。一枚一枚の葉はもちろんのこと、空との境目にある草木に留まったトンボまで写し出しています。私が見つけたのは2匹。みなさんは何匹見つけられたでしょうか?

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/350秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F8 / シャッタースピード:1/125秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

中判デジタル機の魅力は解像力だけでなく、立体感や質感描写がフルサイズより優れている点です。潮風を浴びサビと腐食が進んだ古い扉は、それまでの長い歳月を感じさせてくれる味わい深い佇まい。思わずシャッターを切ってしまう被写体です。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/50秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F8 / シャッタースピード:1/320秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

陽が傾いた“夕まずめ”の時間帯。海釣りのゴールデンタイムとも言える時間帯にベテランの釣り師が大きく竿をしならせていました。ギャラリーに囲まれ数分のやりとりの末にタモ網へ入ったのは、目測50cmくらいある大きな真鯛。近くには真鯛の養殖イカダがあるのですが「脱走兵じゃないよ!天然物だよ!」と近くにいた方が歓声を上げていました。よく通う港で立派なショアレッドが拝めるとは、次回はカメラではなくロッドを手に訪れたいと思った一枚です。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/125秒 / ISO:400 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F8 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

6×6を彷彿とさせる、スクエアフォーマット

ハッセルといえば6×6スクエアフォーマットの印象が強いと思いますが、『HASSELBLAD 907X 50C』にもアスペクト比が選べる機能が搭載されています。通常は4:3のところ、今回は500シリーズを意識してスクエアフォーマットでも撮影を行いました。左の手の平に乗せるように持ち、人差し指はカメラ正面左下にあるシャッターボタンへ。マニュアルフォーカスに設定したレンズを右手で操作しつつ、ウエストレベルのチルト液晶を上から覗き込めば、完全にハッセルブラッド500シリーズの持ち方です。そして写し出す画は真四角に切り取ってくれるのですから、もう感動という言葉以外見つかりません。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F11 / シャッタースピード:1/100秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

岩場にポツンと打ち上げられていた流木をモノクロームで仕上げました。黒い岩肌と白い流木がなんとも印象的な一枚です。今でこそスクエアフォーマットはスマートフォン撮影での定番になっていますが、カメラ好きからすればハッセルやローライのイメージが強いはず。日の丸構図と呼ばれる被写体を中央へ置いた構図が最高に映えるこのフォーマットは、大型センサーの描写力を得てよりインパクトのある写真に仕上げてくれます。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/1500秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F8 / シャッタースピード:1/90秒 / ISO:400 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F4 / シャッタースピード:1/100秒 / ISO:400 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

鈍く光る鉄扉の質感。生々しいという表現がこの写真に適切かは分かりませんが、このような立体感と湿度を伴った緻密な描写は他機種ではなかなか難しいと思います。扉の冷たさや重さ、そこに漂う空気までも感じとれるような描写です。

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

絞り:F11 / シャッタースピード:1/250秒 / ISO:100 / 使用機材:HASSELBLAD 907X 50C + XCD 45mm F4 P

 

 

HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C   HASSELBLAD (ハッセルブラッド) 907X 50C

憧れのHASSELBLADを、現代に。

約5000万画素の大型センサーと、それをフルに活かすために作られた高画質のレンズ群。中判デジタル機ながら驚くほどコンパクトに作られた『HASSELBLAD 907X 50C』は誰しもが待ち望んでいたカメラ、待ち望んでいたハッセルブラッドと言っても過言ではないでしょう。上の写真でお分かりになると思いますが、ボディと呼べる部分は極薄で、後ろにデジタルバックを付けた姿は広角仕様のSWCを彷彿とさせる佇まい。しかし撮影スタイルは右下のシャッターとウエストレベルでチルト液晶を使い500シリーズのように使うことができる面白さがあります。現代のデジタルカメラは性能で語られがちですが、この『HASSELBLAD 907X 50C』はそれらと一線を画す性能と品格を兼ね備えた一台だと言えるでしょう。古き良きデザインを引き継ぐのは決して懐古主義やオマージュではなく、ポルシェやBMWのようにそのブランドのアイデンティティの体現したもの。憧れのハッセルブラッドが今ここにあります。

 

Photo by MAP CAMERA Staff

 

 

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