ついに発売となった『SIGMA Art 105mm F2.8 DG DN MACRO』。ミラーレス専用Artライン初のマクロレンズということで、待ち望まれていた方も多いかと思います。先んじてソニーEマウントモデルのKasyapaを公開させていただきましたが、本日はライカSL/TLマウントモデルのご紹介です。本レンズはマクロ撮影はもちろん、中望遠単焦点として高い水準で光学性能をまとめ上げており、ポートレートやスナップ撮影においても最大限の力を発揮します。Lマウントアライアンスによって実現した交換レンズとしての自由さと実用性を確かめるべく、今回も3メーカーのボディに併せて撮影して参りました。作例の枠を超えた写真の数々をご覧ください。
1枚目はやはり接写能力を見たいもの。拡大して見なければ気づくこともなかったであろう木の葉の葉脈、どころではなく凹凸や皺まで確認できます。解像力を重視するために手ぶれ補正機構も省いている当レンズ。『SIGMA fp』も手ぶれ補正機構はありませんが、シャッタースピードとISO感度を上げることで撮影に成功しました。
SIGMA Art 105mm F2.8 DG DN MACRO + SIGMA fp
折角なので中景くらいもチャレンジしてみました。拡大しても木の葉1枚1枚まで確認できるほどの解像力です。マクロレンズですが中望遠レンズでもあるので こういう風景写真にも向いていると思います。個人的には解像を活かしたこの使い方がおすすめです。
中央に鳥の群れがいることがおわかりいただけますか。実はこの鳥の群れは撮っている時には気づかず、現像中モニターで見て気づきました。 偶然にも関わらず画面真ん中にいた、という驚き。アスペクト比も見方が気持ちいい「21:9」で撮りました。
この時期になるとススキが綺麗です。前ボケの具合も兼ねて中ほどで風に揺られているススキを撮りましたが輪郭もスッキリ。 前ボケもいい具合に融けています。
中望遠の何が良いところかというと、やはりその切り取り要素。被写体を絞ることでその被写体が持つ写真には収まらない前後の時間を想像させるような力があります。手ぶれ補正機構のない『SIGMA fp』ですが、冒頭の写真のようにシャッタースピードを上げれば手持ちでマクロ域を撮影することも可能です。ボディとのバランスが不安な方、実はとても持ち易いバランスになっていますのでご安心ください。折角の解像するマクロレンズ、ぜひ組み合わせていただきたいです。
SIGMA Art 105mm F2.8 DG DN MACRO + Panasonic LUMIX DC-S1R
海沿いの公園に設置されている像をまず撮影。やや傾いてきた日を浴びて、金色に輝いている様が実に気高く見えてほぼ考える前にシャッターを切っていました。じっくり見て頂くと実に良く解像していて、素材として使われている金属の質感がひしと伝わってきます。しかし生物らしい滑らかさの様なものを感じるのは、レンズの描写に加えて、この像の製作者が込めた思いの素晴らしさもあるのでしょう。
マクロ撮影によって魅力を引き出せる被写体を考えた時、計器類が良いのではと思いつき、船舶を訪れました。今は保護されている南極探査船の操舵室で、実際に使われていたであろう方位磁針に見惚れ、文字部分にピントを合わせて撮影しました。室内はやや暗い場所ですが、『Panasonic LUMIX DC-S1R』に搭載されている電子ビューファインダーの視認性の良さに助けられ、MFでも難なく収めることが出来ました。
錨のモチーフが施された柵。港近くのこの場所ならではの装飾でしょうか。Artラインレンズのシャープな写りは時に「錆び」でさえも魅力に昇華してしまいます。この場所で雨や潮風に幾度となくさらされながらも佇んできた時間の経過を厳かに語りかけてくるようです。
まもなく沈もうという夕陽。しかし雲を割くように、昼の光を名残惜しむように明かりを放っています。雲のディティールや、対岸の建造物の細かな線までもしっかり描写されていて、この組み合わせの高画質な画作りに感心させられました。遠くの情景を意のままに枠に収めることが出来るのも105mmという焦点距離の魅力でしょう。
SIGMA Art 105mm F2.8 DG DN MACRO + Leica SL2
このレンズで何を撮ろうかと考えたときに最初に思い浮かんだのがお寿司でした。それもエビの握りにしようと心に決めていました。いざ前にするとどう切り取るか悩みます。今回は尻尾の先にピントを合わせ、どこまでもとろけていくボケ味の非日常を表現することにしました。
悪い顔をしたかぼちゃたちに詰め寄られている、ひとつのかぼちゃ。表情を伺い知ることはできませんが、きっと怯えているに違いないと思いながら撮影しました。しかし後で写真を見返してみると、その悪い顔をしたかぼちゃ軍団の指揮官のようも見えてきました。妄想は写真の楽しみのひとつです。
筆者は写真スタジオ出身でこれまでたくさんの振袖姿を撮影してきたこともあり、着物の人を見かけるとつい目で追ってしまいます。この可愛らしい衿元のつまみ細工は最近の流行。衿の間に挿し入れているではなく重ね衿に縫い付けられているので、落としてしまう心配はありません。着物を着ると色々と気を配る必要があるので、ひとつ心配が減るのは実は大事なことなのです。
健康志向の新しいカフェがオープンしているのを見つけました。お店に足を踏み入れるとパンの香りが漂い、ガラスケースには美味しそうなデリやグラスに入ったゼリーが並んでいます。その中から三層になった美しい生姜のゼリーをオーダー。大理石の白いテーブルは綺麗だけれど色味が欲しかったので、お皿を端に寄せて背景に木の床を写し込みました。ぜひ写真を拡大して、上に乗った小さなお花の繊細な描写と、ゼリーのようにとろけるボケ味をご覧ください。
視点が変わる、日々が輝く
汎用性の高い中望遠は、それぞれ特徴の異なるボディの良さを引き出し、どんなシーンにも「撮りたくなる」一瞬があることを教えてくれました。ふと目に入ったものに意欲が湧いたり、「この画角でこんな風に撮ろう」とあらかじめ考えて撮影に臨んだけれど、もっと魅力的な一面を見つけられたり。『SIGMA Art 105mm F2.8 DG DN MACRO』には撮影者の固定概念を打ち砕き、普段見えている日常を鮮やかにフレーミングしてくれる力があるのです。「Artライン」の光学設計による高い描写性能を存分に味わい尽くすことが出来るマクロレンズ。色んなものに寄って、時には少し離れてみて…自分だけの画角を見つけて頂きたいと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff