颯爽と現れAPS-C機の定番機となりそうな予感が既にする『FUJIFILM X-S10』で早速撮影してきました。465gという小型軽量なボディに掴みやすい深いグリップ、『FUJIFILM X-T4』と同等のセンサー、映像エンジン。「クラシックネガ」を含む18種類全ての「フィルムシミュレーション」も搭載。連写速度はメカシャッターで約8コマ/秒、手ぶれ補正機構は最大6.0段でバリアングルモニター。『FUJIFILM X-T4』と比較すれば下がっている部分こそありますが、このクラスのカメラに求める性能としては十分すぎるほどです。(例えば連写速度は『FUJIFILM X-T4』は約15コマ/秒、手ぶれ補正機構は最大6.5段分といった違い)。グレイン・エフェクトやカラークローム・エフェクトの設定も可能で、14bitRAW記録にも対応し、動画はDCI 4K(4096×2160) 30p 200Mbpsまで対応。さらに、初めてカメラを購入する層にはAUTO/SP(シーンポジション)モードで、RAW記録やAFエリア(シングルポイント、ゾーン、ワイド)が選択可能など、あらゆるユーザーに対して魅力的な仕上がりになっています。そしてこのハイスペックでありながら手にしやすい価格帯であることも魅力の一つ。
フジフイルムを選ぶ大きな理由の一つでもある「フィルムシミュレーション」。本機では上部のダイヤルで簡単に、直感的にフィルム替えをすることが出来るようになっているのがとても嬉しい仕様です。撮ったままで楽しめるカメラ、ということで今回の写真は全てJPEG撮って出しでご紹介いたします。フィルムメーカーであるフジフイルムの「色」ぜひご覧ください。
まるで少し日暮れ前の時間帯のようですが、実は撮影時はまだ午前中。フィルムシミュレーション「クラシックネガ」の色は記憶に訴えかけるというのか、「懐かしい」感情を呼び起こさせる色味で個人的に大好きなフィルムです。歴史や時の流れを感じるような被写体にも「クラシックネガ」はぴったりです。
この場所に他に誰もいなかった時の、あの場の静けさまで写してくれているような気がします。フジフイルムの「赤」はとても良い色で、「PROVIA」はスタンダードな発色ながらハイライトシャドウのトーンもなだらかで全体的な仕上がりの完成度やフジフイルムの「色」の良さが最もわかるフィルムです。
「クラシッククローム」のブラウン系統の色味再現がとても好みです。窓から入り込んでくる光の当たり方がとても自然で、触れられそうなくらいのリアリティを感じられます。
あえて逆光時のフレアゴーストを狙ってみました。いわゆる綺麗目な仕上がりの写真には邪魔になる場合が多いフレアゴースト、錆びや汚れも含めて「クラシックネガ」にとっては良好な関係にあるような気もします。デジタルはどれくらいフレアゴーストを要素として足すのかをその場で確認できるので狙ってみてはいかがでしょうか。
海沿いを歩いていると船内の見学が出来るという船があったので入ってみました。1938年、耐氷型貨物船として建造され、太平洋戦争を経験した後、南極観測船として活躍した「宗谷」です。煙突(ファンネルと呼ぶそうです)のブルーのコンパスマークと赤い部分のペンキ色が印象的。ベタッとした色味は潰れがちですが、飽和することなくしっかりと再現してくれました。ちなみに入場は無料ですが、募金をすると記念のカードが貰えます。(貰いました)
操舵室にある航海計器の一つ。少しアンダー目で、光に反射した金属のヌルッとした光沢感を強調しましたが、なんとも艶のある写りではないでしょうか。
上下の黒いフレームが影響してまるでアスペクト比「16:9」のような仕上がりに。今回使用したレンズは『フジノン XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS』。開放絞りの作例ですが、ピント面の立ち方といい解像感といい最初の一本として長く使えるキットレンズかと思います。個人的には背景のボケ具合が絶妙で動画で撮る際もシネマチックな表現にちょうどいいボケ量ではないかなと思っています。
白をベースにしたアートな建物。午後の日が差し込んで美しい影とのコントラストが生まれていました。モノクロフィルムである「ACROS」で場を表現しました。
この時期、日の入りはもう17時前とかなり早くなっていて15時過ぎにはだいぶ日が傾いています。先程の写真とは光の印象がガラっと変わりメリハリのある硬調な仕上がりに。ただそれでも黒が潰れないのが「ACROS」の良いところです。
どこかで鳴ったクラクションに驚いたのか夕焼け空を一斉に飛び回る鳥の群れ。咄嗟のシャッターでもAFがしっかり効いてくれます。ボタンやフォーカスレバーはやや小さめなので手の大きい方は少し大変かもしれません、ちなみに筆者は全く問題ありませんでした。深いグリップのおかげで撮影中は終始ハンドストラップの感覚で片手で持ち歩きながら撮影出来ました。この片手持ちで撮影出来るか否かというのは写真構図を練る際に大きく影響してくるのでこの扱い易さはやはり魅力です。夕暮れ時の逆光は太陽のギラツキが気になる「クラシックネガ」と夕方の組み合わせは最高です、ぜひ撮ってみてください。
「記憶色」とよばれる豊かな発色が特徴的な「Velvia」で撮った夕暮れの波際。光から遠ざかるほど深くなっていくトーンが素晴らしいです。
※拡大画像にはRAW現像した写真が表示されます
青に沈んでいく海の色に夕日の色が溶け込んでいく様子が印象的でした。こちらもフィルムシミュレーションは「Velvia」を当てています。しかし撮っているうちに自分なりに味付けがしたいなぁと思う時がくるかもしれません。そんな時が来た時の為にもRAWデータの保存もおすすめしたいな、という思いがあります。RAWデータがあればカメラ内現像で他のフィルムシミュレーションにも変更したりエフェクトを変えることが出来るので撮ったあとも楽しめます。とはいえ自分なりの現像は出来てもフジフイルムの「色」は完璧に真似することはできません。本当に素晴らしい色を出すメーカーだと思います。
実はこの写真だけクリックしていただくとRAW現像で撮って出しよりトーンを少し強めに出した写真が表示されるようにしています。もしご興味あればクリックしてみてください。RAW現像も楽しいものですよ。
日々、軽やか。
『FUJIFILM X-S10』を持ち歩きましたが膝を曲げたり、しゃがんだり、片手で撮ったり、そんな動作の一つ一つを本当に軽やかに撮影出来ました。既にXユーザーでもある皆様も最高のサブ機として考えていた方も多くいらっしゃると思いますが、初めてカメラを持つ方にとってもオススメな一台です。RAW現像という作業は好きな方(筆者も含め)にとってはデジタル写真の楽しみの一つではありますが、撮って出しで楽しみたいという方も多くいます。するとやはりこのフジフイルムの「フィルムシミュレーション」はとても魅力的です。今回筆者も使用しましたが、撮影ブラケット「フィルムシミュレーションブラケット」は3種類のプリセットを選択することができ、1枚撮れば自動的にその3種類で記録してくれるのでどのフィルムがいいか分からないという方におすすめです。
もしくは「AUTO/SPモード」で撮れば最適な設定にカメラが自動で設定してくれるので、最初はまずは撮影を楽しんでみるのもいいでしょう。そのうち、自分好みの設定が固まってきたら4つあるカスタムポジションに設定することも出来ます。また、今回Kasyapaではご紹介に漏れましたが動画面においても、DCIフォーマット(17:9)での撮影、Full HD240Pハイスピード、F-Log撮影などとても充実した機能があります。よくぞこれだけの機能をこの小さなボディに盛り込んだなというのが正直な感想です。APS-C機としてはトップモデルの性能とコストパフォーマンスを誇る『FUJIFILM X-S10』。フジフイルムユーザーだけでなく写真を撮ってみたい全ての方にオススメしたいカメラです。
Photo by MAP CAMERA Staff