主に中判カメラの製造を手がけ、よりハイクオリティな写真を求める方から絶大な信頼を集めるハッセルブラッドのカメラ。
大きなイメージサークルを持つ機種が大半を締めるラインナップの中に、昨年発表されたAPS-Cサイズのセンサーを搭載したミラーレス一眼の登場には正直驚きました。
ラテン語で月を意味する「Lunar」と名付けられた本機。1962年にNASAの宇宙計画に採用され人類初の月面撮影に使用された経緯を持つことでも有名な同社が「月」に由来する輝かしい名称を用いたことから、このルナが昨今のミラーレスブームに乗ったのではなく、本格的に新たな分野に挑戦しようとする意気込みのようなものが感じられます。
Eマウントを採用したミラーレス機はグリップ部にレザーやウッドを使用し、トップカバーにクロームメッキを施すなど高級感ある仕上がりになっています。
今回撮影に使用したモデルは、高級家具やギター用の木材として人気のある「マホガニー」材を使用したモデル。
肌触りの良いスベスベとした質感ながら、指掛かりの良い大きなグリップでしっかりホールディングできます。ハンドメイドの原型を用いて伝統的な工法で作られたというだけあって、快適な握り心地です。他にもレザーやカーボンファイバー、オリーブウッドなど種類豊富にあるので、是非ご自身手で一番しっくりくるものを選んでいただきたいものです。
さて肝心の写りはというと、2430万画素センサーを搭載しているだけあって納得の高精細感です。
ガラス越しの撮影でもカップの細かい模様や、ブレスレットの輝く質感などをしっかり描写しています。
スポットライトが落ちる照明下の影の出方や光の持つ暖かさも感じられる高い解像力は、高画質を追い求めてきた中判ユーザーでも安心して使える高スペックです。
美しい高画質は約235万画素の有機ELファインダーを覗くとすぐに実感できます。ルナのロゴが入ったラバーアイカップが周りの余計な視界をカットし、光学ガラスのファインダーと見間違うような透明感のあるファインダーは撮影意欲をかき立ててくれます。
またフリーアングルの液晶モニターが、ウエストレベルの撮影も可能としており、どことなくハッセルらしさを感じる仕上がります。
また液晶モニター脇のコントロールホイールとは別に設けられた、2つのコントロールダイヤルが各種設定をスムーズに操作でき、初めて触るスウェーデン製のカメラとは思えない直感的で快適な操作が可能です。
カメラ本体にセット化されたレンズ「LF18-55mm F3.5-5.6 OSS」は35mm判換算で27-82.5mmと広角から中望遠までカバーしたコンパクトで使いやすい3倍のズームレンズ。約4段分の手ぶれ補正機能を有しており、持ちやすいカメラ本体のグリップと合わせると、高解像度機でもブレの心配をしないで撮影ができるのは心強い限りです。
同じEマウントのレンズで同等のレンズも発売されていますが、ハッセルのレンズはフードやレンズキャップもお洒落に加工されており、細部まで徹底したデザインの拘りを感じます。
路上に面したバーカウンター。ちょっと離れた位置からでも棚に並ぶ瓶や間接照明のグラデーションを美しく再現しています。
手前に割り込んだ街路樹の前ボケも美しく、ハッセルの他のカメラと異なる小さなセンサーでもハッセルならではの美しい画を描き出してくれることが分かります。
最先端技術とイタリアン・デザイン、ラグジュアリーの限りを尽くした究極のデジタルミラーレス一眼カメラ「Lunar」はレトロな美しい外観で、その名のとおり月と同じ不思議な引力を持つカメラです。
Photo by MAP CAMERA Staff