フジフィルムXシリーズに、また新たな1台がラインナップに加わった。 外観は今夏発売された「X-M1」に似ており、手にしたレッドはあたかも同機の新色モデルと見間違えてしまうほど。 そんな新顔の一番の特徴は撮像素子にある。従来のXシリーズはいずれも、独自のカラーフィルターをもつX-Trans CMOSが用いられ、このことはフジフィルムのプレミアムカメラ、Xシリーズの代名詞であった。
今回登場した「X-A1」は、敢えてこのX-Trans CMOSを用いずに通常のベイヤーセンサー、さらにローパスフィルターをも搭載させたことで、同社のカメララインナップの新たな1ページを創造している。
雨上がりの夕焼。その情緒を静かに、けれどもひしひしと伝えてくれる鮮やかな発色。 このカメラを手にした当初、気になったのはやはりX-Trans CMOS非搭載という点だった。フジフィルムならではの発色の良さも、撮像素子が違うことで、いくらかの差が表れるのではないか、と。しかしながら、数カット撮影する中でその不安はいとも簡単に払拭された。 階調表現はとても豊かで、目の前の世界を切り取ることも叶えてくれ、時には肉眼では見つけきれない様も撮影者に教えてくれる。
重厚なメタリックが放つ涼の質感、煉瓦が内側から醸しだす暖の質感。どちらもしっかりと表現してくれている。
フィルムメーカーならではのフィルムシミュレーションモードも勿論健在。モノクロでのノスタルジックな撮影が簡単な設定の下にすぐに楽しめる。
このカメラの何よりの強みはその機動力にあるのではないだろうか。純正で最も大きな望遠レンズを付けても苦にならないコンパクトさは、長時間の撮影を可能にするばかりでなく、手持ち撮影の幅を広げてくれる。
上位機と比べても遜色ない高感度の強さには、モニターを眺めて思わず唸ってしまった。
せっかく縁あってカメラを買うのなら、その相棒となるカメラに求める期待値は必然的に高くなる。 そんな中にあって、この「X-A1」は、洗練された気品溢れるデザインに、高い操作性も兼ね備えており、持つ者に上質な満足をもたらしてくれるに違いない。人が多い場所では大きなカメラを取り出しにくい―― そんなシチュエーションでも気兼ねなく構えることが出来、これから写真を始める女性の方にもお勧めだ。
「X-Pro1」の発売以来、フィルム時代からカメラを使っていた方から初めてカメラを触る方まで、多くの人に選ばれてきたフジフィルムのレンズ交換式Xシリーズ。 そんなXシリーズを、更に多くの人々に届けたい。そんなメーカーの切なる願いが、これ以上ない形で、少し遅めの実りの秋を迎えている。
Photo by MAP CAMERA Staff