100年以上の歴史を持つ光学メーカーがこれまでの技術の粋を集めて開発した「CarlZeiss Otus 1.4/55」。
55mmF1.4の標準マニュアル単焦点レンズで約40万円という価格もさるものながら、気になるのは世界最高とうたうその実力です。
果たしてそれを皆様に伝える事ができるのか?重いプレッシャーを感じながら撮影に出掛けてきました。
最初の1枚で、今まで使っていたレンズとは明らかに違うというのが感じとれました。
綺麗な大きなボケ味、透明感、解像力、全てにおいてワンランク上の描写感があります。
解放から高コントラストを実現したというだけあって色乗りの良さが見た瞬間にすぐ伝わってきます。白壁の細かな模様もしっかり見てとれる驚愕の解像力です。
画面下中央に配置された照明が照らす光のコントラスト再現も素晴らしく、周辺減光を一切感じさせない本当の光の強弱を見る事ができます。
普段は乾燥している冬の1日ですが、小雨が降りしっとりと濡れていく様子がしっかり伝わってきます。
その日の温度や湿度、そして静かな雨音まで記録してしまう見事な透明感です。
解像力が高く色乗りが良いレンズは質感を伝えるのがとても上手です。立体感もさる事ながら、カラフルな色使いの装飾がまだ目の前に残っているように感じます。
明暗の差が激しい被写体でも、飛び潰れが無い見事な再現力です。湾曲面に当たる光のグラデーションがより立体感を高めています。
大きいながらも解像力の高いボケが、被写体の奥行き感をしっかり表現します。
金色に輝く社殿が雨に濡れより艶やかになっていた様子もしっかり再現されています。
光の反射で薄く見える部分もそれが白飛びではなく、輝いているように見える階調の細かさが感じられます。
フサフサの毛並みに細い髭、そして金色に輝く鋭い目。猫の写真はよく見ますが、ここまで質感を細かく再現する画はなかなか見かけません。触れなくてもその質感が手に伝わってきそうです。
照度の異なる照明がたくさんある街中の夜景でも、その場所場所での明るさの違いがしっかり伝わってきます。
さらに驚くのが前ボケの草に対する解像力。水面の反射で光源と重なりつつも一切のフリンジを出さない色収差への徹底ぶりが伺えます。
中判カメラで撮影しているような映像が得られるレンズは、その大きさも中判カメラ用を思わせる大きさです。約1kgの大きなレンズを見たときは正直驚きましたが、外箱に描かれている10群12枚Apo Distagonの構成を見て納得。実に贅沢な作りをしています。
デジタルカメラの高画素化に対し、レンズの性能が追いついていないと度々耳にしますが、本レンズの描写を見て改めてその意味を理解しました。普段見慣れた画像とのあまりの違いに「こうも変わるのか…」。これがこのレンズを使って感じた素直な感想です。
写真においてのレンズの重要度を再認識させられる1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff