398:『Voigtlander NOKTON 58mmF1.4 SL IIS』
2017年01月13日
クラシックレンズの味わいと現代的な性能を両立させ人気を集めた「Voigtlander NOKTON 58mm」がリニューアルし、『NOKTON 58mm F1.4 SL IIS』として生まれ変わりました。
新ノクトンレンズが手元に届き思わず口にしてしまったのが「懐かしい」という言葉。始めて手にするレンズにも関わらず、旧ニッコールレンズに似たデザインにAi連動をさせるための蟹爪付きレンズは、私がカメラを始めた頃、中古店で購入を悩んでいたレンズそのものです。今でこそ、気軽に買える値段になりましたが、当時の憧れを思い出すと嬉しい気分になります。撮影前にレンズのデザインだけでこんなにテンションが上がったのも久しぶり。さっそく撮影に出掛けてきました。
ダブルガウス構成の伝統的な光学系をそのまま引き継いだというノクトンレンズ。しっとりとした色乗りに少しソフト効果をかけたような独特な描写が楽しめます。最近は開放からキレのあるシャープなレンズが多かった為、オールドレンズのような独特な味わいはとても新鮮に感じます。
撮影に訪れたのは年の瀬の築地場外市場。つい先日の撮影でも、オールドテイストのレンズで撮影すると懐かしく感じてしまうから不思議です。市場の移転で今後大きく変わってしまうかもしれない景色は、思い出に残しておきたい1枚。そんな被写体には最適なレンズではないでしょうか。
ピントリングも指かかりの良い総金属製となり、心地よいリングの重さと相まって、より丁寧なピント合わせが可能になりました。少し絞ると中央部の高い解像力と周辺部の柔らかなボケが絶妙なバランスを醸し出します。絞り具合でも様々なバリエーションが味わえるので、カット数も増えてしまい、その場を離れるのが難しくなるという難点が生じてしまいました。
最短45cmでF1.4の撮影では、ソフトフィルターをかけたような柔らかなボケ味が楽しめます。
さらに明るめに撮影すればより柔らかく、幻想的な雰囲気を演出することが可能です。
遠景撮影では、広角レンズかと思わせるような周辺光量の落ち方と、無限遠でも周辺部の柔らかな写りが確認できました。
シンプルな色の被写体でも独特な色のりで、他のレンズでは味わえない描写が楽しめます。
逆光時でも雲のグラーデーションを綺麗に捉えてくれました。水平線に見える船や建造物のディテールもしっかり捉えています。
水面反射部のフリンジが目立ってしまいましたが、直視するのも辛い強い反射だったことを考えれば仕方のないこと。オールドレンズらしい味ということで。
ノクトンの名を検証すべく夜間撮影にも挑戦です。
夜空にそびえ立つスカイツリーは、昼間とはまた違った迫力があります。下層では明るい照明が鉄骨のディテールを綺麗に描き、高層ではぼんやりと浮かび上がるような照明の様子を綺麗に捉えてくれました。本レンズの独特な色のりは、乾燥した冬の空でもしっとりとした印象で描いてくれます。
開放時の大きなボケ味は暗いシーンでも綺麗に表現されます。LED照明のフリンジが少し目立ちますが丸ボケも綺麗で、ノクトンの名にふさわしい性能を見ることができます。
運良く、プロジェクションマッピングのイベントに遭遇。綺麗な映像ディテールを残すべくF8まで絞って撮影すると、これまでとはまた違った高いコントラストの描写が確認できました。塗装されたかのようなしっとりとした描写はそのままに、映像が当らない暗部の様子もしっかり描く高い解像性能を見ることができました。
ソフトな描写としっとりとした色のり。最新デジタル対応レンズとは一線を画す独特な描写で、本レンズでしか味わえない写真が楽しめます。
冒頭にも触れましたが、所有欲を刺戟するデザインも見逃せません。今回はレンズの描写力を最大限に引き出すため「D810」を使用しましたが、フィルムカメラやクラシックデザインの「Df」等と組み合わせれば、さらに格好良くドレスアップされることでしょう。写りも見た目も美しい高性能レンズ。普段とは違ったスパイスとしていかがでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff
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