映像業界で注目を集めるSIRUI (シルイ)のアナモルフィックレンズシリーズから、24mm、35mm、50mm、75mmがセットになった『PRO CINEMA アナモルフィックレンズセット 24-35-50-75』が新たに登場しました。海外では「SIRUI MARS」と呼ばれているレンズセットです。最大の特徴は、外装を映像制作用に最適化しているところ。近年ではシネマレンズ市場へ新規参入するメーカーも増えており、このタイミングでの登場に期待が高まります。レンズマウントにはマイクロフォーサーズを採用。今回はPanasonic GH5Sに装着して撮影を行いました。早速ですが、使い勝手や外観レポートを交えながらファーストインプレッションをお届けしたいと思います。既に『SIRUI 24mm F2.8 Anamorphic』『SIRUI 35mm F1.8 Anamorphic』の撮影レポートも掲載していますので、そちらも併せてご覧ください。
MOVIE
Angle of Views
最広角となる24mm。建物など直線の多い被写体では歪曲が見られますが、特殊な光学系を持つレンズとしては十分に抑えられています。シネマスコープと広角のワイドな表現が魅力です。
林の中にひっそりと佇む神社。岩肌の質感描写も良く、その場の空気感が伝わってきます。広角から中望遠まで主要な焦点距離をカバーしたことで様々なシーンでお愉しみいただけると思います。
ピント面、ロープの細かな毛羽立ちまでしっかりと捉えてくれました。シリーズ通して、シャープな写りですが、どことなく懐かしさを感じさせてくれる描写が印象的です。他のシーンではどう出てくるのか、色々と試してみたくなる独特の味があります。
やはり気になるのが、フレアの描写。少し極端なシーンですが、強い光源が入ると特有のフレアを見せてくれます。現代レンズにおいて、レンズフレアは決して好まれるものでは有りませんが、本レンズにおいては重要な要素の一つ。横に伸びる特徴的なフレアの描写を求めてアナモルフィックレンズを選択するクリエイターも多いです。特性を理解してフレアを活かす事が出来れば、表現の幅がさらに広がります。
Lens Set
次に外観を見ていきましょう。まず初めに「SIRUI 35mm F1.8 Anamorphic」と並べて撮影してみました。レンズの大きさはほとんど変わりませんが、外装デザインが大きく変更されているのが分かります。
レンズセットには付属のレンズ4本が収納できる専用のレンズケースが付属します。防水性・防塵性に優れた頑丈なつくりとなっており、撮影現場へ安全に持ち運びをすることが可能です。
金属製のレンズ鏡胴は精緻に仕上げられており、マニュアルフォーカスレンズで重要となるヘリコイドの滑らかさ、手に取ったときの感覚も良く所有欲も満たしてくれます。レンズの絞り表記はより正確な明るさを求めるT値を採用。24mm(T2.9)以外は全てT2絞り(35mm、50mm、75mm)となっています。
レンズの全長はそれぞれ異なりますが、フォーカス・絞りのギア位置が統一されているのでレンズ交換の際もフォローフォーカスなどのアクセサリーの再調整が不要となります。
ギアはシネマ業界スタンダードの0.8Mピッチで、既存のアクセサリーとの互換性もあります。また、レンズサポート用のネジ穴(1/4)が設けられているのでカメラボディへの負荷やマウント部のガタつきを軽減してくれます。
動画撮影ではマニュアルフォーカスで撮影することも多く、フォーカスギアの有無はレンズ選びの際にも重要な要素の一つとなります。フォーカスコントロール対応ジンバルとの組み合わせもおすすめです。
SIRUIの次なる一手
「50mm F1.8 Anamorphic」の登場から着実にラインアップの充実化が図られているSIRUIのアナモルフィックレンズシリーズ。「SIRUI PRO CINEMA」の登場によって、より魅力的な選択肢が加わったと言えるでしょう。シネマレンズとしては手にしやすい価格帯で有りながら外観の質感など完成度が高く、映像を撮る“道具”として撮影者をアシストしてくれる強い味方となってくれます。今後は、より広角、望遠にも対応するレンズラインナップの拡充にも大きく期待したいところです。ぜひあなたも、アナモルフィックレンズでしか得られない唯一無二の描写を新たな作品作りに生かしてみてください。
Movie by MAP CAMERA Staff