780: 寄るも引くも極上『Voigtlander MACRO APO-ULTRON 35mm F2 X-mount』
2022年07月23日
フォクトレンダーからまたしても新しいレンズが発表されました。フジフイルムX用マウント専用として設計された大口径の標準マクロレンズ『MACRO APO-ULTRON 35mm F2』の登場です。フォクトレンダーの「アポランター」と同じようにアポクロマート設計された「ウルトロン」です。最大撮影倍率は1:2。標準域単焦点レンズのハーフマクロレンズというと、Carl Zeissの銘玉『Makro Planar T* 50mm F2』が頭をよぎる筆者。ミラーレス時代に生まれたハーフマクロレンズは一体どんな写りを見せてくれるのか、早速撮影してまいりました。尚、今回使用した個体は絞り羽根の形状が製品版と異なっております。あらかじめご了承ください。
表紙の凸凹まで緻密な解像感。「ウルトロン」の名にふさわしい高解像な画を見せてくれました。
光沢感、色ノリ。非常に艶があって色気さえ感じてしまう写りです。アポクロマート設計による色滲みのない自然な発色はフィルムシミュレーション「PRO Neg. Hi」に非常にマッチしているのではないでしょうか。
逆光性能は非常に高いです。逆光に目を細めながらやっとのことで撮れたフレアゴーストはこちらです。普通に使っていて逆光に悩まされるということはおそらくないでしょう。
最短撮影距離は0.163m。ボディ内手振れ補正の恩恵を授かりつつ、手持ち最短撮影距離で撮影してみました。最大撮影倍率1:2といえど、APS-Cセンサー搭載の『X-T4』との組み合わせならここまで寄れることが出来ます。手前後ろのボケも表現として個人的にとても好感のもてる写りです。
やや光量が乏しい条件下で撮影した一枚。最短撮影距離が短いおかげで、少し手狭な場所でも思うように構図やアングルを決めて撮影出来ました。標準域で寄れる、この面白さと快適さを知ってしまうと普通の標準レンズに戻るのが大変なんです。あぁ、あのレンズはもっと寄れたなぁ…といつだって思い出してしまう存在になってしまう中毒性があります。
蓮の花にスポットで光が射し込んでおり、その姿はとても神々しく手を合わせたくなってしまいました。
たっぷりの光を浴びた「クラシックネガ(Classic Neg.)」のカット。このレンズは手前にピントを置いたときの立体感のある描写がたまらなく良いです。それもまた「アポクロマート」の恩恵だと思うのですが…素晴らしいの一言です。もともと解像力の高さが魅力の「ウルトロン」ですが、その特性にさらに磨きがかかったようです。
暗がりこそややある程度で、夕暮れ時の開放絞りの割にはほぼ周辺減光が見受けられません。中間距離にピントを置いた際の立体感は見事です。
寄るも引くも極上
Carl Zeissの『Makro Planar T* 50mm F2』という標準ハーフマクロレンズが大好きだった筆者。もちろん、全く同じ性質を持っているというわけではありませんが、標準レンズながら寄れる画作りの多彩さ、精細な描写、立体感、色ノリの良さ。あの時の「これはイイ!」となった時と同じ気持ちになれました。フジフイルム本家の『フジノン XF33mm F1.4 R LM WR』や『XF 35mm F1.4 R』があるとしてもマクロ性能も備えたこの『MACRO APO-ULTRON 35mm F2』というレンズを選ぶ理由は十分にあると思います。
新しい銘『MACRO APO-ULTRON 35mm F2』。筆者はいずれ銘玉と呼ばれるようになる一本になる予感がしています。ぜひ皆様もこのレンズの語り手に。
Photo by MAP CAMERA Staff