ミラーレス用レンズの販売でさらに勢いの増すレンズメーカー「タムロン」から、遂に同社初のフジフイルムXマウント用レンズが登場しました。その名は『TAMRON 18-300mm F3.5-6.3 Di III-A VC VXD』。タムロンのお家芸とも言えるこの高倍率ズームは、APS-Cセンサーを積むミラーレス機のために専用設計されており、すでにEマウント用の同レンズは高い評価を得ている1本です。
単焦点レンズの愛用者が多いXユーザーからすると「高倍率ズームって写りはどうなの?」と思う方もきっと居ることでしょう。この種のレンズは“便利ズーム”と呼ばれ、どうしても描写より利便性を重視したイメージがあると思いますが『TAMRON 18-300mm F3.5-6.3 Di III-A VC VXD』はその常識を覆したレンズと言えるかもしれません。その描写力、ぜひご覧いただければと思います。
まず使用して最初に感じたのが解像力の高さ。ズームによってF3.5-6.3と明るさの幅はありますが、開放からしっかりと芯のある写りをするのが特徴です。
この写真は植物園を訪れた際に撮影した大きな葉の写真なのですが、光に透けて浮かび上がる細い線状の葉脈までしっかりと写し出しているのです。そして「結構寄って撮っている」とお気付きの方もいるでしょう。本レンズの最大撮影倍率は1:2、つまりハーフマクロと呼ばれる域まで寄って撮影することができるのです。
友人家族と公園へ行った時の一枚から。口では「水飲み場で遊ぶな!終わり!」と注意しつつ、シャッターはちゃんと切ります。そして自分の幼かった頃もこういう水遊びは楽しかったなと思い出しました。
そしてこの時、子供と公園に行く時に本レンズは最高だなと実感しました。遠くで遊んでいる時も、近くに寄ってきた時も、確実に写真におさめることができる汎用性の高さ。AFスピードも素早いので走り回る小学校低学年くらいなら余裕で追従することができます。
ハイビスカスの赤をフィルムシミュレーション:Velviaにて印象的に仕上げました。遠くに咲いている花も『TAMRON 18-300mm F3.5-6.3 Di III-A VC VXD』ならなんのその。標準ズームでは撮れない世界を切り取ることが可能です。
久々に高倍率ズームを使用したのですが、ズームして構図を作る面白さに改めて気付かされました。ヨットハーバーの区画を表すアルファベットの指標を圧縮効果を利用して組んだ構図。普段使用している標準レンズでは気付けない、望遠だから撮ることのできる一枚です。
ソーセージが焼ける煙までも美味しそうに撮れてしまうレンズ、と感じてしまうのは私だけでしょうか。何気なく撮った写真なのですが想像以上でした。
陽が傾き、光がオレンジ色に変わってきた時間帯。海に照り返す柔らかな夕刻の光と、時合いを狙うシーバスアングラー。ズーム幅で写りこむ要素を少なくまとめられるのも本レンズの良いところです。
撮影日は空一面に曇が広がる灰色の空だったのですが、最後の最後で太陽が少し顔を出し空を赤く染めてくれました。それに合わせるかのように頭だけ出した日本一の山・富士山。鳥達が飛び立ち、ドラマチックな夕焼けを演出してくれました。
写真を撮る喜びを。
気付いたその瞬間を、全て写真にすることができる楽しさ。『TAMRON 18-300mm F3.5-6.3 Di III-A VC VXD』を使用して率直に思ったことです。掲載写真の撮影データを見るとお分かりいただけますが、高倍率ズームは望遠側で使うシーンが多くなるレンズだと感じました。1本で全て撮れるというのが高倍率ズームのメリットではありますが、望遠ズームの代わりとして使用しても面白いかもしれません。いざという時に広く撮れるので、望遠時にある「引き足りない」と感じることはないはずです。実用としてはお気に入りの単焦点、XFレンズで言えば33mmや35mmにプラスで持っていけば、より満足感の得られる撮影が行えると思いました。
なんというか「高倍率ズームもここまできたか」と感じた撮影でした。“便利”という言葉では収めることのできない実力と魅力を持ったレンズです。ぜひ多くの方に使っていただきたい1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff