Carl Zeiss Planar T* 50mm F2 ZM
2023年07月31日
今回ご紹介するのは2005年頃から発売されているロングセラーレンズ『Carl Zeiss Planar T* 50mm F2 ZM』です。スペックや描写に華があるわけではなく、まさにスタンダードな標準レンズ。しかし開放絞りで最高のパフォーマンスを誇るこのレンズ、筆者も実際に使ってみてその中央部の解像力に驚かされました。 今回は最新機種『Leica M11』と組み合わせて撮影に行ってきました。クセがないからこそずっと使い続けたくなる「ザ・スタンダード」。その描写ぜひご覧ください。
ちょうど中間あたりにピントを置いて撮影しました。ちょっと分かりづらいのですがフェンスを見てみるとピントの芯が見えてきます。地味といえば地味な描写なのですが、こう写ってくれるんじゃないかという撮影者に応えてくれるような感じがしてニンマリしてしまいます。自己満足なんですけれど、そういうものをちゃんと満たしてくれるってありがたいです。
手前のフェンスのボケもあって視線が一気に吸い込まれていく感じがします。マニュアルフォーカスレンズなので動きの激しいものはなかなか難しいですが、あらかじめピントを合わせておいて、その時その時に発生する誤差はピントリングを微調整します。どれくらいの力加減で回せばいいのかが分かってくると、とても楽しいです。
ほぼ最短撮影距離で撮影してこのキレの良さ。良い意味で予想を裏切ってくれました。赤の発色も明るめでボケ味も嫌な感じがありません。
ハイライトシャドウのバランスが絶妙です。濃すぎることもなく薄すぎることもなく。この時空は少し曇り気味だったのでそのソフトな光をそのままに捉えてくれたことになります。お見事です。
開放絞りから非常に良く写るレンズですが、少し絞ってあげるだけで、周辺部までシャープに写ります。
プライベートで写真を撮るときはニュアンスやら直感で撮っている筆者。このレンズを使っているとついついその癖が出てしまいます。整ったピント面とアウトフォーカスのギャップがたまらない一枚です。個人的には好きな方ですが背景がごちゃごちゃしている時のボケは好き嫌いがあるかもしれません。
石段一つ一つが陽の光を浴びて輝いているのを見て、モノクロだと綺麗だなと思い撮影しました。なんでもない景色ではあるのですが、撮りたくなる魅力があります。引き画でもキリっと仕上げてくれるので安心して使えます。
ボートのふちにピントを合わせたのですが、PCで仕上がりを確認してそのキレの良さに非常に驚きました。水面に反射したハイライトで滲む前ボケの描写も好物です。
ザ・スタンダードレンズ
開放絞りがF2の標準レンズをこの時代に選ぶというのはむしろ決断力が必要な気もします。なぜなら明るさは正義ですから。でも実際にこうして使ってみるといつも思うのです。「F2があれば十分。むしろ開放絞り値がF2であることがいい」となってくるのです。もう一つ、このレンズの良さはサイズが手頃であること。プライベートで使うならこのサイズはベストです。長い人生、色んなレンズを使いながらも結局最後に使うのはこういうレンズなのではないでしょうか。ぜひ上質な標準を味わってみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff