Voigtlander ULTRON Vintage Line 28mm F2 Aspherical TypeII VM
2023年03月17日
例えば、自分にとって好みのレンズとはどういったものだろう、と考えた時。贅沢なもので写りはもちろんのこと小型・軽量なものが頭に思い浮かびます。それは撮影の目的がスナップショットをメインに据えるのならばなおのこと。カメラを携え、眼前の光景に寄り添い、もしくは対峙しながらリズム良くシャッターを切る。手中の機材に委ねながら、感性赴くままに写真を撮り続ける醍醐味に浸れるひとときです。今回使用したレンズは『Voigtlander ULTRON Vintage Line 28mm F2 Aspherical TypeII VM』。重量230g、マウント面を含めた全長36mmと軽量・コンパクト。更にフィルター径はφ39mmでその小ささは掌に十分収まるほどです。スナップショットの名手がこぞって手にしているイメージがある28mmの画角で思い思いに街中を切り撮ってみました。その写り、是非ご覧ください。
広角レンズに属される28mm。より広域を撮れる焦点距離のレンズは多数あり、その印象は一見すると控え目。ですが、そこから感じる奥ゆかしさは他のレンズにはない唯一のものだと思います。光と影の集合体である被写体をそのままに、無理なく写真に仕上げる。それは、まるで撮り手の思いを両の手で救い上げてくれるようにも感じました。
静寂の中、『Leica M10-P』の優しいシャッター音が静かにさえずります。雄大な自然も一斉に目を覚ますかのような快晴の下、その重厚な佇まいを写真におさめました。
紅いカーペットが映える洋館に赴きました。現代では少々急に思える階段。来館者の足音から一呼吸遅れ、遠慮がちにギシギシと音が響きます。背筋を正さずにはいられない端麗な造りを覗き込むように撮りました。
中庭ではきらびやかな姿の目立つ鯉が悠然と泳いでいました。人なれしているようで、近づいてくるその様はたなびく雲の群れを連想させます。被写体とその背景をファインダーいっぱいにおさめることができるのも広角レンズの良さのひとつ。複合的に集まっている要素のひとつひとつが合わさり、写真の中でストーリを構築してくれます。
控え目、だから美しい。
ふと、私たちの日常を振り返ってみると、何かと情報量の多い毎日に思えてなりません。インターネットは生活に必要不可欠であり、そこからは無数の情報が秒よりも細かい単位で更新を重ね、意識的・無意識的に関わらず目に飛び込んできます。それは、ともすれば実に説明的な日々と言えなくもありません。そういった中で写し出す『Voigtlander ULTRON Vintage Line 28mm F2 Aspherical TypeII VM』の画角は素直でシンプル。余計なものを足すことがなく、控え目な画角は気持ちの余裕さえも表現してくれるかのようでした。思うがままに、そしてあるがままに身を委ねることができるレンズ。この写りを是非ともご堪能いただきたいと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff