タムロン『SP 150-600mm Di VC USD G2 (Model:A022)』インタビュー 【Part 3】
アクチュエーターの改良と新制御アルゴリズムにより、手振れ補正レンズの応答性が向上しました。厳格なCIPA規格準拠で4.5段分の手振れ補正効果を実現しております。また、従来の補正モードに加え、流し撮りモードと補正モードを最優先したモードを追加しております。 |
● MODE1:ファインダー像の安定と補正効果のバランスがとれた、基本となるモード。 ● MODE2:流し撮り専用のモード。 ● MODE3:補正効果を優先したモードで、シャッターが切れる瞬間のみ補正。 |
補正効果を優先したモードの場合には、ファインダーを覗いている時には手振れ補正は働かず、レリーズをする瞬間に一気に補正レンズが動くような制御となっております。 |
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つまり補正レンズ群がセンタリング(中央で維持)された状態で待機して、そこから最短距離で作動するということですね。 |
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まさにその通りです。半押し中にファインダー像を安定させ続けている間に、例えば補正レンズが大きく下に移動しているところからレリーズの際に逆向きの振れを検知して移動したのでは実際に移動量が足らず補正効果が低下することもあり得ます。レリーズ時の補正に限定することで最大の補正効果を生み出し歩留まりを向上させます。 |
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ちなみに今回のSP 150-600mm Di VC USD G2(Mode:A022) の手ぶれ補正効果は、望遠端600mm時の補正効果でいうと何段分の補正効果となるのでしょうか? |
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これについては望遠端の600mm時において4.5段の補正効果を実現できております。 |
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600mm時に4.5段分なんですか!?そもそも最近の手振れ補正効果についての記載方法に“CIPA規格”準拠というのがありますが、わかりづらいですよね。実はこの質問をする前にCIPA規格についての資料をWEBで開いてみましたが、求めている内容を見つけるのは不可能だと3秒で悟りましてブラウザを落としました。(笑) |
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さすが、一応資料に目を通そうとは試みられたわけですね。(笑)今までも各メーカーさんでも補正効果の記載については移行期みたいなところがありました。旧モデルの頃にはその他め具体的な数値を公表しておりません。 |
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記載こそしておりませんでしたが、当社の製品ではいつも望遠端での測定としております。今回の600mmでの4.5段補正は一眼レフカメラ対応レンズでは業界トップクラスとなるはずです。 |
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なるほど、そうお伺いするとますます凄まじい補正効果ですね。 |
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VCとAFをそれぞれ別のマイコンで制御し切り分けたことによって、性能を大きく向上させることができました。 |
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ただもともと撮影のうまい方ほどそもそもの振れが少ないので、体感できる補正効果は人それぞれでしょうね。 |
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私もいろんな撮影は体験していますが、超望遠域だけは門外漢です。おそらくそういう方は多いのではないでしょうか。旧モデルのSP 150-600mm Di VC USD(Model:A011)が登場するまでは600mm級のレンズも限られた高価なレンズのみで到達できる次元でしたので、その超望遠域の裾野を拡げる価格帯のレンズには必要な手振れ補正性能ということになるのだと感じますね。手持ちで600mmというコンセプトにもマッチしています。 ところで御社の製品の手振れ補正は、動画撮影時の最適化などはどうなんでしょうか。 |
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実際には静止画の撮影時の性能を目指して撮影しています。ですがTAP-in Consoleで対応レンズの手振れ補正の設定(本レンズでは手振れ補正MODE1の設定)を「標準」から「ファインダー優先」に切り替えると半押し時のファインダー像の安定だけでなく、実はライブビュー中の補正効果も高まるんですね。 |
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これって結構な豆知識ですよね。35mm、45mm、85mmと手振れ補正付きのF1.8レンズが揃いましたので、動画撮影のためのレンズシステムとしてもオススメできそうです。 |
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ただあくまでTAP-in Consoleを介してしか切り替えができない設定ですので、静止画撮影時の補正効果は撮影条件によっては弱まる可能性があるのでご注意ください。 |
進化点その5はその他についてです。 |
● フォーカスリミットのカスタマイズ・・・オートフォーカスでの駆動範囲の調整を行う ● フルタイムマニュアルのカスタマイズ・・・フルタイムマニュアルフォーカス機能の有効/無効の設定と、切り替えるためのフォーカスリングの回転量を調整できる ● VCの調整…手ブレ補正機構が搭載されているレンズでは、3種類からVCの動作モードを選択できる(レンズにモード選択レバーを備えた本レンズではモード1の詳細設定として、初期設定の「標準」からファインダー像の安定性を優先する「ファインダー優先」への切り替えが可能) |
着脱しやすく、安定性に優れたアルカスイス互換のクイックシューに対応する三脚座を新規設計しております。Model A011の三脚座に比べて座面を伸張し、持ちやすさを考慮したグリップ形状を採用しています。また、素材にはマグネシウムを用いることで軽量化を図り、手持ち撮影時の負担軽減も考慮しております。 |
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当社で試写を担当している人間も、三脚座が非常に握りやすく持ち運びのハンドルとしても良いと言っていました。また、アルカスイス互換のシューは良いですね。 |
どのような形状が手持ちに合うかは全体的なバランスも考慮する必要もあり今回アルカスイス対応の三脚座を開発するにあたり、いろいろな三脚メーカーがアルカスイス互換に対応していることがわかりました。ただ、厳密な規格化されているものではないため全ての三脚座に対応というわけにはいきませんでした。 |
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アルカスイス互換はマチマチですね。御社の製品はどの辺りのメーカーのものに合わせたのでしょうか。 |
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まずはやはりアルカスイスの純正ですね。あとは確認できる範囲の主要三脚メーカーです。 |
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いわゆる国内で一般的に流通しているものを、ということですね。 |
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どの辺りのメーカー製と互換性を保ったほうがいいなどというのはありますか。 |
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Really Right Stuff(リアリーライトスタッフ)、KIRK(カーク)辺りが高価ながら信頼性と新製品対応のシューの発売も早く、メジャーでしょうか。ただし前者は個人輸入でしか手に入れられないですね。今は中国製の安価なものも手に入れやすいので色々と試しましたが…。あ、この話題は脱線し過ぎてしまいそうですね。アルカスイス互換は奥深いので、私もドツボにハマりました。(笑)野鳥など、超望遠レンズや重量級の機材を使うユーザーの方には浸透していると思いますので、ここのサポートはありがたいですね。 |
ズームリングを前後にスライドさせることにより、任意のズームポジジョンで瞬時にズームリングのロックと解除が出来る機構を搭載しました。 |
もちろん、従来のズームロック機構も合わせて搭載し携行時の自重落下にも配慮しています。 |
任意のズーム位置でロックする機能はとても欲しい機能のひとつでした。実際に従来からある縮めた時に効くズームロックについては、お客様も勘違いされているケースもあり、店頭で「なんだ、縮めた時だけなのね」という反応を頂くことも。もちろん携行時の自重落下防止がそもそもの機能なのでしょうが、今までこういったどこでもズームをロックするというような機能が直進式のズーム以外で採用されなかった理由と、今回のA022で採用に至れた理由とはなんでしょうか。 |
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従来のズームロックは一箇所に楔を打ち込んでロックするような機構でした。任意の位置でロックする機構は昔から要望を頂いてはいましたが実現は難しい技術です。直進ズーム式はズームのトルクを締め付けで変更できる仕組みなんですよね、そのため締め付けを強くすれば任意の場所で固定もできる。回転式のズームリングとは仕組みそのものが違ってきます。 以前の当社のレンズでSP 28-105mm F2.8 LD Aspherical IF(Model:276D)にズームの“アンチスリップモード”というものがございまして、その仕組みを応用、発展させています。SP 150-600mm Di VC USD G2(Mode:A022)はズームの遊びが全くなく、フレックスズームのロックリングをスライドさせることで摩擦力を応用してズームをどこでも固定することができました。 |
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なるほど、このリングをスライドさせることで内部では締め付けが生まれ、摩擦抵抗が高まっているということですね。この機能があることで、画角の固定ができるので単焦点レンズを使い慣れている方にもいいですよね。普段は500mm F4や600mm F4のような重量級レンズを使っていた方が、染み付いた画角感を狂わせずにフレーミングできるのではないかと。あと、撮影後の写真を見ていてズームレンズなのに500mmとキチッとした数値が撮影データに出ていると、狙って撮っている感じがして良いですよね。これが513mmとかだと行き当たりばったりで撮った感が出ちゃうっていう。(笑)いえ、かなり穿った見方ですけどね。 |
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実際にフィールドテスト撮影途中に露見した、一度カメラを下ろしまた構え直した時に画角が変わってしまうという現象を防ぎたいというのがありました。 |
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確かに超望遠の画角は狭いので、一度その場で見つけた最適な画角をまた微調整するのは面倒ですね。やはり重要な機能です。ここまでお話を聞いた限りでも、とても実践的な改良が製品に対してなされているなという感触を得たのですが、タムロンさんの社内には写真撮影をしっかりとやられている方がいらっしゃるのでしょうか。 |
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社内にも写真撮影に本気で取り組んでいる人間もおりますが、製品へのフィードバックできるように早めのフィールドテストができる体制から得るものが多いです。 |
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