FUJIFILM GFX インタビュー【Part 3】
AFの話でいうと、Xシリーズには途中から像面位相差AFが採用されましたよね。これはX-E2が登場して『X-Trans CMOS II』になった時だったと思うのですが、これはセンサーが新しくなったからできるようになった技術という認識でよろしいですか? |
|
そうですね。 |
|
そうなると、今後は『GFX』にも像面位相差AFが採用される可能性はあるのでしょうか?
|
|
まず言っておきたいのは、このサイズ(中判サイズ)のセンサーに像面位相差が搭載されたものは現時点でまだないです。 |
|
それは、存在しないという事ですか?
|
|
少なくとも我々が使えるものとしては存在しないです。 他社の中判デジタルカメラは一眼レフなので、当然位相差AFできますよね。一般的な一眼レフと同じように位相差センサーを別体で搭載することができますから。 仮に像面位相差搭載中判センサーを独自で作ったとしたら、おそらくカメラは数倍の値段になるのではないかと思いますよ。「結局、中判デジタルってそういう値段なのね」っていう位になりますね。 でも、我々は標準レンズとセットで100万円を切るという目標で作ってきましたから。例えば先ほどのX-Transもそうですが、それを『GFX』に入れちゃうとカスタム設計が1つ増える事になるので、当然コストも変わってきます。カメラを供給する側として、お客様に対して大事にしないといけないものは、性能だけでなく、お客様が欲しいカメラを出来るだけリーズナブルな価格にする、ということもあると思うんですよね。
|
|
なるほど。まぁ、GFXのような超高画素機にX-Transと像面位相差AFも搭載しているカメラが登場して欲しいという将来的な夢みたいなものはありますよね。 |
|
そうですね。それは多分いままでの歴史が証明していて、10年前に像面位相差なんてものはありませんでしたが、今ではセンサー全面に位相差センサーが搭載されている、なんていうのもありますから。 あっという間に進化するのがデジタルデバイスなので、そこはこれから先、まだまだ進化していくと思います。
|
|
確かに。Xシリーズだと今まで発売後にファームアップを繰り返して性能が飛躍的に上がったりしていると思うのですが、『GFX』もその辺の拡張性の余力はまだ残していると思っていていいのでしょうか?
|
|
もちろんです。『GFX』もこれから色々と改良を重ねていこうと思っています。 最初に我々が想定したスペックの一部には、正直不安な部分もありました。例えばAFスピード。コントラストAFだけだと、過去の経験からレンズによってはピントが合うまで0.5秒くらいかかるケースもあります。AFスピード最速0.1秒というXシリーズが既にある中で、これはちょっと受け入れられないんじゃないか?という不安とか。 他にもX-T2でブラックアウト時間を一生懸命削って、ブーストモードで0.1秒くらいのブラックアウト時間にまで縮め、動体を追うのにもほぼ問題ないとレベルに仕上げたにもかかわらず、中判になるとセンサーの読み出しスピード限界の関係でブラックアウト時間が長くなるという不可避な事例があるんです。 でも、そういった懸念点を開発陣がファームウエアやAFの制御方法、フォーカスレンズの駆動方法等で頑張って解決してくれて、その結果、コントラストAFのみでも中判カメラとしては実用上最速レベルのAFスピードと実用性を実現していると評価されました。今後もそういった開発を続けることでまだまだ『GFX』は進化出来ると思っています。 |
ドキュメンタリー、スナップ、スポーツといった撮影はXシリーズがカバーしています。こういった撮影目的、被写体には、これからもXシリーズのハイパフォーマンス化で対応していきます。いわゆる高速AFや小型軽量で機動力が求められるような分野の撮影ですよね。 一方、『GFX』は自然風景、建築、コマーシャル、スタジオポートレートといった、より高画質が求められる撮影が中心になります。 写真というのは、それぞれの撮影目的にあったカメラが絶対にあるわけで、当社ラインナップの場合、APS-Cでは物理的に限界のある領域を『GFX』が対応する、と。 なので、Xシリーズと『GFX』は用途が被っていないんです。そこが『GFX』を作る目的でもありましたね。 |
|
なるほど。いまのお話を聞くと元々狙っているターゲットがプロカメラマンなのかなと感じたのですが。 |
|
半分はプロですね。詳しく言うと、我々の想定としては50%がプロ。そしてもう半分が緻密な描写が求められる風景をメインに撮影しているハイアマチュアの方たちですね。 まぁ、日本と海外ではプロとアマの認識や境界線が違ったりしますから、一概には言えないところなんですけど。ターゲットはそういう分け方をしています。Xシリーズに比べて更にプロウェイトは高いと想定してます。 |
|
プロを想定した場合ですと、例えば写真館であったり、スタジオ撮影の現場ではCaptureOneなどテザー撮影に対応したソフト利用率が多いと思うのですが、そういったソフトへの対応というのは? |
|
そうでしょうね。まぁ、CaptureOneに関してはメーカーが「ダイレクトコンペティター(フェーズワン以外の中判デジタル機メーカー)には供給しません」と発表していますからね。 先にも少しお話ししましたが、フェーズワン社とはX-Transの現像に関して頻繁にメールや技術のやり取りをするなど、しっかり連携はしているのですが、中判になると「すみません、それはできません」となるわけですよ。これは今のところ我々にはどうしようもありません。
|
|
なるほど。当初からSILKYPIXに関しは対応していると発表されましたよね。 |
|
はい。SILKYPIXは我々の言うところの標準ソフトで、唯一無償で入手することのできるソフトなので。 それと、既存のXシリーズ同様AdobeさんのLightroomにも対応しています。もちろん、両者にはフィルムシミュレーション現像も入っています。
|
|
他メーカーではオリジナルで現像ソフトを作っているところもありますが、『GFX』やXシリーズ用にその予定はありますか? |
|
ないですね。 これも賛否両論なんですけど、我々の認識だとプロの方はあまり自社ソフトを希望しないですね。撮影によってカメラを使い分けるので、今回A社のカメラを使ったからA社のソフト、次はB社のカメラを使ったから、B社のソフト、というのが一番嫌だとプロカメラマンから言われています。 どこのカメラ使っても現像ソフトは共通がいいという方が多く、新たにソフトを作ってしまうと、プロの方はそれを覚えないといけなくなりますから嫌がられます。多分すべてのソフトウエアがすべてのメーカーのカメラに対応していて、どのソフトを選んでも、それだけで済むというのが理想なのでしょうけど、それは私どもにはどうしようもできないから仕方がないですね。 ただ、これはちょっと変則的かもしれませんけど、“FUJIFILM X Acquire”というテザーシューティングソフトを新しく作りまして、それを使うと画像データを転送するだけなら、例えばCaptureOneにも対応出来るんです。 そして、今回『GFX』にはJPEGの圧縮率を下げた「スーパーファイン」という形式があります。その画質は、B0に伸ばしても全然問題ないほどの高画質ですので、撮影後に多少画質補正するくらいなら十分対応できるはずです。 それをCaptureOneやLightroomにテザーで飛ばしても良いですし。それでもまだ画質劣化が心配な方はTIFFという手もあります。『GFX』ではカメラ内RAW現像でTIFFに変換することが出来るようにしました。それを画像処理ソフトに移して編集する。そうすることで、RAW現像対応による制約を解消していく。一部のプロユーザーの方は実際にそうされています。
|
|
51Mの中判デジタルの画像データをTIFFで書き出すと、相当大きなデータサイズになると思いますが、ずばりオススメの理由は何なのでしょう?
|
|
何と言っても、100%富士フイルムの色が出るということでしょうね。 たとえRAWデータであっても、PCで表示される時は使用しているソフトの色再現が入った表示になっています。なので、同じRAWデータでもボディの背面モニターや各ソフトで見た時の色が少しずつ違って見えるんです。 これは、例えばポジフィルムのように唯一無二の色が存在する映像と違って「オリジナル」という概念が成立しないデジタル独特の問題ですね。画像を表示する様々な媒体によって色は変わります。 そして、仮に全く同じパラメータでRAW現像をしても、使うソフトによってやっぱり色再現やノイズレベルは変わります。例えばフィルムシミュレーション現像はLightroomでもできますけど、富士フイルムが設計した色と100%同じにはならないんです。色や階調はほぼ揃っていますが、WBやその他の考えが少し違うので、オリジナルの富士フイルムの色はボディの中にしか存在ない。 なので、もし富士フイルム100%監修の色の大容量データが欲しければTIFFに落とすのが一番オススメということになります。 |