マウントアダプターで繋ぐFとZの世界線。今回は1977年発売、開放絞りでの夜間撮影を目的につくられた『Ai Nikkor 58mm F1.2 Noct』。6群7枚の変形ガウスタイプのレンズで 夜景・星景を撮る際に発生してしまうサジタルコマフレアを補正するべく、手間を惜しまず研磨技術者達の技で磨き上げられたレンズです。そのため生産数も限られ当時から現代に至るまで大変貴重なレンズとなっています。夜景・星景を目的としたレンズではありますが、せっかくなので日中も撮影してきました。ぜひご覧ください。
ふわっと色もコントラストも薄くなる世界。ホワイトバランスをやや青みがけて雰囲気を変えて見ました。ここまでソフトな描写だと好みがはっきり分かれるかと思いますが、好きな方にとってはなかなか代わりのない描写です。
ピクチャースタイルを「フラット」にしてホワイトバランスを温かめに調整しました。開放絞りということもあって少し溶け合ったように、全体的に色味が同化されています。
接写した影響があると思うのですが何度見ても不思議な写り。ぐるぐるしているというよりは、まるで内側から膨らんでいるような感覚です。
接写の影響もあり全体的にふんわりとした画ですが、街中のなんでもない被写体を見つけながら撮るのが楽しくなりました。ボケ味については賛否あるレンズですが、個人的にはこれくらいボケの演出があった方が使いがいがあるのではないかと思います。
Nocturne(夜想曲)からその名をとったといわれる『Ai Nikkor 58mm F1.2 Noct』。夜の光で屋外の花を撮ろうと思ったことなどなかった筆者もこのレンズならば、という期待を込めて撮影。いまでは当たり前のように夜の撮影が出来るようになってきましたが、1970年代のこういった存在のレンズは本当に貴重なものだったと思います。
冒頭の写真やこの写真においては、あえてゴーストフレアを招き入れてみました。とても特徴的なゴーストなので演出の一つとして活用するのもいいのではないでしょうか。
このレンズでわざわざ長時間露光をする必要もあまりないかもしれませんが、絞り込んだ時の解像度をご覧ください。垂れ幕の文字などもスッキリ解像しています。ちなみに三脚なしで安定した場所に置いて撮影しました。レンズ自身はずっしりとした重みがあるのですが、アダプターの三脚座がうまいところで止まってくれたようです。
Nocturne(夜想曲)からその名をとったといわれていますが、ちょっとしたロマンを感じずにはいられないレンズ。描写性を追求したレンズかと思えば、下地に込められた技術者達の技。光学ファインダーでは困難だったピントの掴みも『Nikon Z7II』というミラーレスカメラのおかげでとても使いやすくなったレンズではないでしょうか。このレンズが生まれた理由などメーカーHPの「ニッコール千夜一夜物語」で詳しく紹介されているのでこのレンズにご興味でましたらぜひご一読ください。
Photo by MAP CAMERA Staff