レンズ構成と開放絞りF値によって名称がそれぞれ付けられているライカレンズ。今回使用した『Leica Summitar L50mm F2』はライカのレンジファインダー用で初の大口径レンズ「Summar」と正真正銘エースの看板を背負った「Summicron」の、その間の年代に製造されていたレンズにあたります。その描写は、開放で柔らかいズマールと絞るとカリカリの解像を見せるズミクロンのまさに「間の子」と呼べる特徴を持っています。今回は『SIGMA fp』と組み合わせるために『Leica M-Adapter』と『RAYQUAL Leica M/L変換リング』を用いて装着しています。実写レビューをご覧下さい。
まずは開放の写真です。ピント部でもやや滲みが出て、コントラストが落ちている印象ですがシルバーの鈍い輝きと相まって金属質が嫌味なく表現されています。ここから1~2段絞るとまた違うのですが、今回は滲みの味わいが気に入って開放で撮影しました。
控えめなコントラストも風情があって惹かれてしまいます。自然な周辺減光も相まってフィルムライクな写りを見せてくれました。
この辺で絞って撮影した写真を少し。F5.6あたりまで絞るとしっかり解像が得られます。起伏のある特徴的な形状の建造物ですが、輪郭を曇りなく再現出来ていて現代のレンズと比較しても遜色が無く少し驚きの結果となりました。今回使用した『Leica Summitar L50mm F2』は後期に作られたコーティングされた個体だったので、ガラスに反射して差し込んできた太陽光もまったく気になりません。
材質を変えてみるとどうでしょう。木材が敷き詰められたコチラも少し変わった壁面です。柔らかい印象はそのままに角や木目、ひび割れている線なども精細に描写されています。年月が経つにつれ表情を変える木材はどこか安心感と包容力があります。
しばらく続いた先月までの暑さで道端で出会った猫もこのうなだれっぷり。『SIGMA fp』に『Leica Summitar L50mm F2』の組み合わせは非常にコンパクトなので被写体に威圧感を与えることはありません。スナップやポートレートを気負わずに楽しめるのもこのセットの長所でしょう。
モノクロは、色の情報がなくなることで被写体のディティールと光のニュアンスがより強調され見応えのある写真になるところが私は好きです。それ故に難しい部分も多々ありますが、『Leica Summitar L50mm F2』は私を悩ませる事はありませんでした。MFでのピント合わせという原初的な行為によって感覚が研ぎ澄まされていることが起因しているのかもしれません。眼前の情景を丁寧に掬いあげて切り取っていく快感は筆舌に尽くせません。
「初めて選んだレンズ」を思い出すときがあります。一台目のカメラを買ったときに付いてきたキットレンズではなく、自分で色々な情報を見て、実際に店頭に赴き、じっくりと選んだ一本目。この『Leica Summitar L50mm F2』は、そんな存在なのではないでしょうか。そして、「撮る喜び」に突き動かされた人たちの目となって日々を彩っていた。そんなレンズが、長い時間をかけて『SIGMA fp』と邂逅し、今度は現代の写真家たちと一緒に夢を見ている。マウントアダプターが、また一つ可能性の光を灯したのでした。
Photo by MAP CAMERA Staff