マウントアダプターで繋ぐFとZの世界線。今回は「ポートレートレンズ」と呼ばれていたAiニッコールの銘玉『Ai-S Nikkor 85mm F1.4』で撮影してきました。ニコンのFマウントレンズとしては初となるF1.4の中望遠レンズ。前群にゾナータイプ、後群にはガウスタイプを採用した5群7枚のレンズ構成で、最短撮影距離は85cmと当時の中望遠レンズとしては比較的寄れるのも特徴です。
奥まった路地に停まっていた赤いクラシックカー。やや絞った一枚ですが、このメタリックの質感再現は見事なものだと感じました。細かい部分まで解像もしっかり出来ていますし赤の濃密な発色も素晴らしく、現代のレンズに全く引けを取らない写りです。『Nikon Z 7II』との組み合わせで浅い被写界深度を克服したこの『Ai-S Nikkor 85mm F1.4』の写り、ぜひご覧ください。
薄曇りの天気。こんな日は室内にたれ込む淡い光を探します。開放絞りで小瓶を撮影しました。窓越しの写りですが細い枝もキチンと写っていて見事な解像力です。
カラフルなランプがいくつも天井からぶら下がり、異国情緒を感じさせる店内。ボケがザワザワと見えるのはこのランプ自体、小さな球状のものがくっついて出来ているのでそう見えるのです。
カウンターに置かれたドリンクがスポットライトを浴びて運ばれるのを待っていました。実はこちらは店外からの窓越しの撮影なのですが、開放絞りにも関わらずシャープな像を結んでくれました。
85mm相当の中望遠レンズでは中景にピントを置くことで心地いい立体感が生まれます。さすがに開放絞りでは柔らかなピント面に加えパープルフリンジの発生もありますが、光が当たった部分のキラキラとした描写が好ましかったため掲載いたしました。
苔生したアスファルトの舗道、というのは時間の蓄積を感じます。F2まで絞るだけで輪郭にほど良いエッジが立ち、全体的に画が引き締まりました。
このレンズを絞った時の画の雰囲気の変わりようはぜひ体感していただきたいです。絞りで変わる光の「質」をとてもよく実感できます。これは「F11」まで絞った1枚ですがシャドウの締まりも別物です。
F1.4の明るさを活かせば日が沈むのも早いこの時期もたっぷりと撮影出来ますし、高感度耐性が上がった『Nikon Z 7II』とならどんなシチュエーションでも撮影可能です。
ビームライトが夜空を彩るイベント期間中に偶然立ち寄ることが出来ました。遠くのマンションの航空障害灯が丸いボケになり良い演出になったのでちょうど重なり合うタイミングでシャッターを切りました。
「ニッコールはよく写る」とは聞いたものですが、当時の技術でも現代に引けを取らない写りの良さには改めて驚きました。筆者が使用した個体はピントリングがやや重めに感じたので、スピーディーな撮影には不向きですしたが、コミュニケーションを取れる関係ならポートレートでぜひ使ってみたいレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff