SONYのCinema Lineシリーズに最小・最軽量となる『FX3』が登場しました。基本的なスペックは「α7SIII」を踏襲していますが、より幅広い環境で快適に使用できるよう、XLRハンドルユニットや長時間撮影を可能にする冷却ファンを搭載するなど、動画機としての利便性と信頼性向上が図られています。冷却ファンに関してはシネマカメラではお馴染みの機構ですが、コンパクトなFX3に搭載したことは驚きました。今年の3月に発売されてから人気の絶えないモデルで、気になっている方も多いのではないでしょうか。 早速ですが、 作例と共に使用感などのレポートをお届けします。
FX3の詳しい外観レポートもご用意しています。こちらの記事も合わせてご覧ください。
SONY FX3 | 4K MOVIE
撮影の舞台は、東京・代々木上原にある「東京ジャーミイ・トルコ文化センター」。トルコ共和国が2000年に再建した日本最大級のモスクで、建設にあたってはトルコ本国から約100人もの技術者や工芸職人が来日し、建物本体や内装工事に従事しました。伝統的なオスマン・トルコ様式の建築を踏襲したモスク内には、カリグラフィーやステンドグラスをはじめとした美しい装飾が施されており、「東アジアで最も美しいモスク」と称されるほど。一般的に、モスクに異教徒が入ることは許されませんが、ここは文化交流のための場所でもあり、誰でも入ることができる稀有なスポットです。
撮影セッティング
今回の撮影では『FX3』の機動力を生かしてDJI「Ronin-SC」を使用した撮影も行いました。一見すると持ち運びが不便に見えますが、パーツごとに分割して持ち歩けるので携帯性も優れています。設定などは専用アプリで完結できるので現地でもスムーズに撮影を進められました。動画の収録にはCinema Lineシリーズの標準ルックとも言えるS-Cinetoneを使用。通常のガンマに比べて、中間からハイライトにかけて滑らかな階調を持っています。ベースがRec.709なので、撮って出しでも十分美しく、簡単な編集で好みのルックにも調整しやすい印象です。実際に今回の動画でも10bitの情報量を活かし、無理の無い範囲でルックの調整を行いました。
SONY FX3が捉える映像世界
重厚な扉の雰囲気、金属の質感も上手に再現してくれています。センサーに関しては低画素となる約1210万画素。各メーカーとも、高画素化に舵を切る中で、ダイナミックレンジや高感度性能など、高画素とは別のアプローチで画質を追求しています。既に「α7SIII」や「FX6」で多くのクリエイターからも支持されているセンサーだけあって、画質に関してはもう説明する必要はないかもしれません。
前後のボケ具合がいいですね。フルサイズセンサーだとボケを活かした構図で撮影したくなります。床一面に敷かれた絨毯には美しいアラベスク模様が織り込まれています。集団礼拝をする際に、この模様の入った赤いラインに沿って並びお祈りをするそうです。
ダイナミックな構図(12mm側)で撮影してみました。ドーム型の天井には幾何学文様や植物文様、カリグラフィなどが随所に施されており、その繊細で美しい装飾の数々を見事に捉えています。この画角でも画面の隅々まで写るのはレンズの力もあってのこと。
こちらは薄暗い室内でのカット、ISO 800で撮影しました。ISO 800は高感度域とは言えないかもしれませんが、高感度に余裕があれば無理に明るくて重いレンズを持ち歩かなくても良いという選択肢が生まれます。照明などが使用できない場面も想定されますが、期待以上の仕事をしてくれるでしょう。
このカットは電動ジンバルを使い、カメラを真上に向けた状態でパン(回転)させて撮影したもの。この様な映像表現が簡単にできるのも電動ジンバルならでは。モニターはバリアングル式なので、ローアングルポジションなど、自在な画角を可能にしてくれます。カメラを回転させるモーターの速度には限界があるため、4K60pで収録した素材を最終的に24pのタイムラインにすることで編集時に2.5倍のスロー効果を得ています。
ミラーレス感覚で扱える、使い勝手の良いシネマカメラ
「α7SIII」「FX6」「FX3」、多様化する撮影ニーズに応えるSONYの意欲的な商品展開には恐れ入ります。「α7SIII」 や 「FX6」で評価を得た画質を継承し、動画機としての操作性や信頼性、機動力にも追及した夢のような一台。このカメラが手元にあれば、どの様なシーンでも撮影できる心強い1台。旅行はもちろん、日常もコンパクトで軽快な撮影スタイルを存分にお愉しみいただけます。
Movie by MAP CAMERA Staff