927: 世界を見つめる『Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical RF-mount』
2024年04月05日
いよいよ3シリーズ目となるVoigtlanderキヤノンRFマウント専用の大口径マニュアルフォーカスレンズ『Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical RF-mount』が登場しました。重さは約525g、レンズ構成は6群7枚で開放絞り値はF1.5と明るさとコンパクトさを両立。絞りの枚数は12枚で円形に近い形状にすることで美しいボケ味を実現しています。電子接点を搭載することで、Exif情報をはじめ、ボディ内手ブレ補正(3軸)や3種類のフォーカスアシスト機能にも対応しているので純正レンズと比べても違和感なくお使いいただく事ができます。注意点としてキヤノンEOS Rシステムのユーザインターフェイスにおける絞り値は1/3 step表記であることから、Exif情報開放F値は”F1.6”と表示されます。今回使用したボディは、新開発のフルサイズCMOSセンサーと新映像エンジン「DIGIC X」により、EOSシリーズ史上最高の解像性能を実現した『Canon EOS R5』。この組み合わせでどのような表現をしてくれるのかとても楽しみな1本。それではフォトプレビューをご覧ください。
前ボケになる廊下をフレームに見立ててカメラを持った親子を撮影しました。絞り値の変化を見ながら、前ボケとその距離感を絞りリングを操作しながら決めます。お父さんと写真撮影を楽しむその光景にほっこりしながらシャッターを切りました。
風に靡く濃いピンク色のしだれ桜。一番奥真ん中の桜の枝は周りと比べて光が当たり一段明るかったのですがその特徴をうまく捉えています。開放絞りでは周辺光量が落ちトンネル効果のような視覚表現を得られるのですが、この両特性があるおかげで意図通りの写真を撮ることが出来ました。絞ることで均一な光を配ることも出来ますが、それでは真ん中の桜の枝だけを目立たせたいという意図が薄れてしまうと思い開放絞りにしました。絞りをどうコントロールするかを考えながら撮るのが楽しいです。電子接点付きのレンズなのでフォーカスアシスト機能の拡大表示でピント調整が可能なのもとても便利でした。
開放絞りでベージュのロングコートにピントを合わせます。75mmは中望遠域としては控えめな焦点距離ですが、この距離間でこの立体感が出るのがさすがといったところ。光の差し込む光景、そして手すりの金属感もパープルフリンジが出ることもなくとても素直な表現。ベージュのロングコートの質感もしっかりとわかるその描写に驚きました。もちろんマニュアルフォーカスですがピントが合ったときの被写体が立体的に見える感覚がとても気持ちいいので非常に楽しい撮影体験になると思います。フォーカスリングの滑らかさもクセになります。拡大表示でピント調整するときも細かな指の動きを正確に受け取ってくれます。
曇り空で比較的光量の少ない日でしたが、白い壁にもたれかかる植物と差し込む光を開放絞りで撮影しました。僅かながらフレアがでてとても雰囲気ある仕上がり。今回の撮影ではこのフレアは何度か出てきました。なんとも病みつきになる描写でもっと強い日差しの日にも使ってみたいと思わせてくれるレンズです。
最短撮影距離で早めの昼食にいただいたパンケーキを撮影します。最短撮影距離は0.5m。今回はあえて最小絞りでも開放絞りでもなく解像感とボケ感のバランスが良いと感じた絞り値で撮影してみました。プツプツした表面はしっかり解像されていて、お皿はボケすぎず。ちょうどいいバランスです。ちなみにこのレンズの最小絞りはF32。撮影条件だけ整えれば最短撮影距離付近でも深いピントでの撮影も可能ということです。
このレンズが写し出すその空気感、開放絞りで撮影しましたが木馬遊具の質感をとてもよく表現しています。今にも左右にゆらゆらと動き出しそうな臨場感です。癖のないボケ味だからこそ、この空気感が出るのだと思いました。
75mm。標準ズームレンズの望遠端だったり、50mmの標準レンズをAPS-C機(1.5だったり1.6の違いがありますが)に装着した時の画角です。画角整理がしやすくて被写体の立体感が出やすいのでポートレートで使うにもピッタリのレンズです。ジッとその空間を見つめたときのような切り取り方をすることが出来るので、ストーリー性のあるカットも撮りやすいのが魅力です。
日も暮れ、温かみのある電球が映える時間帯となりました。カフェ・橋の写真共に電球の光をとてもやさしく表現。F2までは周辺減光も少しずつ変化していくのですがF2.5から周辺減光が大幅に改善される手応えを感じました。これだけ空が暗くなってもF3.2に絞った橋の写真は空の色がかなり整えられています。周辺減光による視覚効果の違いをコントロールしやすいレンズだと思います。
世界を見つめる
どこか懐かしい、遠い記憶のような美しいボケ味。ピントを合わせた部分は被写体が浮かび上がるようにキリッと、その美しいボケと組み合わせは『Voigtlander NOKTON 75mm F1.5 Aspherical RF-mount』にしか出せない味であると感じました。中望遠域の適度な圧縮効果、そして絞り1段1段のコントロールが実に楽しく、絞るごとに表情を変えるその光景をファインダー越しに眺めるのもまた魅力的なレンズです。既に発売済みの製品として「NOKTON 40mm F1.2 Aspherical」「NOKTON 50mm F1 Aspherical」がラインアップとして存在しますが、これらのレンズを愛用されている方でもポートレート撮影や、圧縮効果を活かした撮影を楽しみたい方。ぜひコレクションにぜひ追加していただきたいレンズです。もちろん、既に発売済みの2本をお持ちでなかったとしてもこの1本があれば、目の前の構成を特別な1枚に表現することのできる魔法のようなレンズ。ぜひ一度お試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff