Nikonよりまた魅力的な超望遠レンズ『NIKKOR Z 600mm F6.3 VR S』が登場しました。600mmと言えば約 2ヶ月前にインナーズームの採用と機動性に優れた「NIKKOR Z 180-600mm F5.6-6.3 VR」が発売されたばかりで、望遠端 600mmでのF値もF6.3と同じ数値となっています。単焦点レンズになりその描写性能がどれほど変化するものか。 さっそく本レンズを手にしたとき、筆者が発した第一声は「軽い!」。先ほどご紹介した「NIKKOR Z 180-600mm F5.6-6.3 VR」で撮影した際も驚いた軽量化でしたが、さらに670gも軽くなっており被写体の動きに合わせレンズをより自在に振り回すことができるようになりました。 先日のファームウェアのアップデートでZ9にも被写体検出設定に「飛行機」が追加されたため、Z9に本レンズを組み合わせ飛行機撮影に出掛けてきました。S-Lineならではの高画質を是非ご覧ください。
多くの飛行機が離着陸する羽田空港周辺では狙った機体とは別の機体がファインダー内に飛び込んでくることが多々あります。そんなアクシデントにも機敏に反応してくれます。素早く止まるAFとクリアな画質が一瞬を高精細に切り取ってくれました。
海上の滑走路に向かう飛行機を狙っているとその上空を別の飛行機が横切りました。飛んでいる飛行機までは約2Kmほどありましたがその機体に書かれた文字もしっかり読み取ることができる高い解像力に驚きます。
離陸後、旋回する飛行機を2倍テレコンを使用して狙ってみました。気温の上昇に伴う若干の揺らぎはありますが、1200mm相当でこれだけの高画質は凄いの一言です。
前回「NIKKOR Z 180-600mm F5.6-6.3 VR」の撮影の際にも訪れた駐機スペースに足を運ぶと運良く同型機が停まっていました。比較になるかもと思い当時と同じように撮影してみました。 光線状態に違いがあるため一概には言えませんが『NIKKOR Z600mm F6.3 VR S』の方が透明感高く撮れたように感じます。やはりナノクリスタルコートを用いたS-Lineは伊達ではありません。
運良く目の前に降り立ったセキレイ。野鳥撮影には不慣れなため、逃げられない距離感を探りながらゆっくり近づきつつ撮影しました。歩きながらでもブレないファインダーやほぼ無音と言っても良い静音AFはとても頼りになります。
さて、野鳥撮影の次は動物園でその実力をみてみましょう。 動物との距離をグッと縮めてくれる「600mm」という超望遠レンズが威力を発揮。棚越しの離れた場所でも迫力満点の画を切り取ることができました。
1.4倍テレコンを使用しても高画質を維持しています。シャッタースピードを稼ぐため高感度でシャッターを切りましたがノイズ感なく毛並みもしっかり描いてくれました。
最短撮影距離は4m。本レンズを近接で使用をすることは少ないと思いますが寄りで得られるボケはとても柔らかく、クリアな画質と相まって色のりの良い綺麗な画を書き出してくれました。
手ぶれ補正機能も優秀です。対応ボディは限られますがシンクロVR機能による6.0段分の手ブレ補正なら超望遠の手持ち撮影をスローシャッターで使用するという離れ業も可能になりました。
夕焼けに染まる富士山にかかる雲の透け感も綺麗です。
最後に2倍テレコンとDXモードを併用した1800mm相当の撮影にも挑戦してみました。クレーターの凹凸を細かく捉える解像力は想像以上でした。
充実の600mmでダントツの使いやすさ
2022年11月にZレンズ初の600mm「NIKKOR Z 600mm F4 TC VR S」が発売されてから約1年で同焦点距離をカバーするレンズラインナップが3本に増えました。どれにも優れた性能と使いやすさがあり目移りしてしまいますが、S-Lineの高画質と携帯性を両立した本レンズは一際注目度の高い存在になったと言って差し支えないでしょう。今回はZ9を使用しましたが、このサイズ感ならどのボディにもバランス良く装着できそうです。さらに前玉部分に付けられたイエローリングはFマウント時代からニコンを愛するユーザーに嬉しいポイント。同時発売となった『Z f』と組み合わせてみるのも面白いかもしれません。 “開放F値 F6.3″という本レンズのスペックを最初に聞いた時は中途半端な数字だなとも思いましたが、実際に使ってみるとその使いやすさが際立っていました。高感度時のノイズ抑制や暗所でのピント合わせもの向上などカメラの進化と呼応しそれぞれの良さを存分に引き出しているのです。Zシリーズだからこその本レンズを是非お手にとってお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff