Carl Zeiss Biogon T*35mm F2 ZM
2023年08月11日
今回ご紹介するのは2005年3月に発売された『Carl Zeiss Biogon T* 35mm F2 ZM』です。発売から18年以上が経過している現在でも古さを感じさせない高性能レンズは、6000万画素の「Leica M11」で使用してもその性能の高さを存分に発揮してくれました。歴史ある「Biogon」の名を受け継いだ明るくクリアな描写ぜひご覧ください。
熱中症警戒アラートが連日発表される猛暑の頃、僅かな涼を求めて水生植物の咲く水辺にやってきました。35mmでは焦点距離が足りないかと心配もしましたが、カメラの解像力が大幅に向上した現在、レンズの解像力が追いつけばデジタルズームやトリミング次第でいくらでも寄ることができるのです。今回は運良く岸から近い場所に咲く花を見つけることができたのでそのままの画角でシャッターを切ることができました。結果、花脈などをしっかり描く高い解像力が一目で分かりました。さすがツァイスレンズです。最初のカットで焦点距離を超えた万能さも見えてきました。
撥水フィルターの名称にもなっている蓮(ロータス)は、水を綺麗に弾いています。そんな葉の表面がどうなっているのかと思いギリギリまで寄ってみました。レンジファインダー機のため最短撮影距離70cmの壁が立ちはだかりますが、それでも瑞々しい質感で切り取ってくれました。若干の周辺減光が雰囲気を作ってくれました。
現在、Carl ZeissのZMシリーズに35mmレンズは本レンズを含め開放F値の異なる3種類がラインナップされています。その中で真ん中に位置するF2のレンズのボケは大きすぎず被写体の輪郭をしっかり残しています。
赤い鳥居がたくさん並ぶ神社。鳥居の列を収めたカットでは周辺が流れ気味だったので、きつねさんを狙ったカットでは四隅まで赤い鳥居で埋め尽くしてみました。前ボケがほどよく嫌な滲みも消え自然と視線を導いてくれます。
強い日差しを反射している金属のオブジェにカメラを向けました。頭上からも正面からも眩しい光が当たっていましたが、オブジェについたスレ傷など細かいところまでよく捉えてくれました。 本来はフレアの具合を見たく色々と角度を変えて挑戦したのですが、なかなか現れてくれませんでした。レンズ保護を兼ねて装着していたフードがしっかりその役目を果たしていたのかもしれませんが、総じて逆光には強い印象を受けました。
ステンドグラスの窓を捉えたカットでは透過する光の具合など、カラーバランス、コントラスト共にバランスの良さ感じることができました。
明暗差が大きいシーンでも潰れ白トビも無く細部までしっかり捉えています。専用マウントとは言えカメラ側では認識できない他社レンズ。補正のかからない素の状態でこれだけよく写るのですから、ボディとの相性はかなり良さそうです。
本レンズを使用して一番驚いたのが歪みを全く感じさせないところです。単焦点レンズとは言え準広角域でこれだけ綺麗な直線で描いているのは大きな魅力です。
炎天下の日差しを避け建物の中から中庭に向けてシャッター切った1枚。白いパラソルにハロが発生し若干のオールドレンズらしさも感じられました。
猫じゃらしに西日が当たり黄金色に輝いていたので、ここでも絞り開放に加え最短距離で捉えました。猫じゃらしの茎はもちろん、頭上の電線までその線を残していることに驚きました。ボケの中にもしっかり芯を残しています。ソフトだけど甘くない、まさに丁度良いという言葉がピッタリな写りをしてくれました。
自然で見たままを忠実に再現する王道のスタンダードレンズ
ライカの現行ズミクロンレンズは開放から四隅までシャープに写る優等生レンズ。一方で本レンズは少し柔らかさを残す雰囲気あるレンズでした。とは言え決して古いという訳ではなく、ソニーEマウントの「Loxia 35mm F2」とほぼ同じレンズ構成図からもわかるようにこのスペックの完成形レンズとも言えます。 歪みもなく丁寧な色再現。なによりライカMマウントレンズの中では、コストパフォーマンスに優れるのも嬉しいポイントです。Carl Zeiss の35mmの中でも中間に位置するレンズは、何かに特化したというよりはバランスよく万能なレンズという印象を強く感じました。
Photo by MAP CAMERA Staff