レンズ本来の最短距離からさらに近接撮影が可能になるヘリコイド付きアダプターなど付加機能を持つアダプターが増えてきた中、さらに面白い機能を持つアダプターが登場したので紹介させていただきます。
『SHOTEN マウントアダプター ニコンFレンズ/ライカMボディ用 距離計連動型 ヘリコイド付き NF-LM R50』は、ヘリコイド部分にM型ライカの距離計を連動させる機能を持たせたもの。焦点距離50mmのレンズを無限遠に固定した状態でアダプターのヘリコイドを操作するとレンジファインダーでのピント合わせが可能になるというのです。さっそく憧れのノクチルックスと同等の明るさを持つ「Nikon Ai-S Nikkor 50mm F1.2」を装着して撮影に出掛けてきました。
前玉が大きな開放F1.2のレンズとの組み合わせではアダプターの部分だけがくびれた形状になり、この狭いスペースでピントと絞りを操作するため慣れが必要な感じがします。とは言えレンジファインダーでピントが合わせられるのは楽しいの一言。ライカのレンジファインダーはいつ覗いても気分が上がります。
さて肝心の描写は流石F1.2の大口径レンズ。とても柔らかな写りを見せてくれました。開放付近では明るい部分の白トビが目立ちますが、絞りを絞るごとに柔らかさが抑えられていく変化が楽しめました。最近のデジカメ専用レンズはその殆どが絞り開放からシャープな描写なので、これだけ盛大な特徴が出るととても新鮮に感じます。
アダプターには無限遠から0.7mまでの距離指標が印字されており目測でのピント合わせも可能です。さらにレンズのピントリングを併用すればより近接撮影も可能になります。
Nikkor 50mm F1.2自体の最短撮影距離は0.5mでしたが、アダプターとレンズの両方を最短側にシフトすることレンズ前面から約0.2mまで寄ることができました。
近接から得られる質感描写は凄いの一言です。近づいても逃げない蝶を見つけたので最短まで寄ってみるとこの解像力。とても1981年に登場したオールドレンズとは思えません。6030万画素のM11とも好相性です。
大口径レンズでよく見られる周辺減光も良いアクセントになり、薄くフレアを纏ったかのような柔らかい描写は夢の世界かのような演出をしてくれました。
屋外での白トビの教訓からスポットで光が当たる際は明るい部分を意識して、露出をアンダー気味にシャッターを切ると雰囲気のある画を描いてくれました。
一見、黒く塗りつぶされているかのような箇所も細かくトーンを描いています。どんなレンズを使っても黒を綺麗に表現するのはライカの凄いところです。
さて気になるのが50mm以外のレンズを装着したらレンジファインダーでピント合わせができないのかという疑問。自宅の防湿庫の奥に「Ai-S Nikkor 24mm F2」が眠っていたので試してみましたが、結果はレンジファインダーでいくらピントを合わせても撮影された画像は全てピンボケでした。50mm以外のレンズを装着する場合は他のアダプター同様、ライブビュー機能や外付け液晶ファインダーを用いてお楽しみください。
ちなみにNikkor24mmF2との組み合わせでは開放F2の柔らかさとオールドレンズテイストが相まって、一般的な標準ズームレンズの広角端とはまた違った雰囲気で描いてくれました。
最短撮影距離0.3mの24mmもアダプターとレンズの両方を操作することでより近接撮影が可能になります。24mmという広い画角でも被写体にギリギリまで寄れば迫力ある画を描いてくれます。
絞り開放では周辺減光に加え周辺の甘さが自然と視線を中央に導きます。本レンズも絞り操作で画の雰囲気が大きく変わるので色々と試したくなります。
純粋にFマウントレンズの描写を楽しむなら魅力的なニコンのカメラが揃っているので、わざわざアダプターを使う機会は少ないかもしれませんが、ライカのレンジファインダー機でピント合わせができるのは大きな魅力です。私だけかもしれませんが、レンジファインダーで写真を撮っていると写真に対するスタンスも変わってくるから不思議です。一眼カメラではきっちりピントを合わせたくなりますが、レンジファインダーでは多少ピントが甘くても許せてしまうのです。なによりオールドレンズの描写をより良い雰囲気で描いてくれるライカの絵作りも嬉しいポイントです。
50mmでしかピント合わせが出来ないのは残念ですが、50mmレンズのバリエーションが多いのもニコンFマウントの凄いところ。ライカのレンズを揃えるの難しくても、Fマウントで擬似ノクチルックスからズミルックス、ズミクロンなど色々試してみるのも面白いかもしれません。きっと嬉しい発見があるはずです。