ニコンの最新機種『Nikon Z6II』に、過去の銘玉を『マウントアダプター FTZ』で装着しての作品を紹介致します。今回選んだのは中望遠にあたる焦点距離を持つ『Ai Nikkor 135mm F2』です。4群6枚構成の変形エルノスタータイプといわれる構成をもつ本レンズは、F2という大口径でありながらレンズ全長は短く、小型にまとめられています。手に良くなじむ形状でピントリングのトルクは非常に良好、撮影に没頭してしまいました。誠実な色描写と、何よりその素直で美しいボケ味を捉えた作例を是非ご覧ください。
秋という季節もだんだんと過ぎ去ろうとしていますが、都内ではまだまだ紅葉を楽しむことが出来ます。印象的な像にフォーカスし、黄葉を背景ボケとしてフレーミングしました。躍動感のある像の造形の力なのか、今にも風が吹いて葉がサラサラと動き出すのではないかと思ってしまいます。
一本の樹木に陽が当たり、あたかもステージの中でスポットライトを浴びるかのような出で立ちです。「私を撮ってほしい!」と訴えかけている気がして、夢中でシャッターを切りました。中望遠の圧縮効果で周りの樹との密集感がありながら、主人公の様に佇む一本の魅力を引き出すことが出来ました。
黄色や緑の色味が好みにぴったりと合い、『Ai Nikkor 135mm F2』を更に好きになった一枚。彩度が高いわけではない食べごろに向かう途中の果実の表皮、ともすれば葉の中で埋没してしまいそうなものですがしっかりと存在感を示しています。
開放の画作りが良く頻繁に使っていましたが、F5.6~8ほどまで絞ってみるとくっきりと線を描いてくれます。雲一つない空の中で凛々しくもこちらを見下ろす電柱の白。135mmという焦点距離は被写体のここぞという部分を切り取るのに最適です。
一転して開放の一枚です。ピント面はかなり薄くなりますが、『Nikon Z6II』の電子ビューファインダーの高い視認性はこのためにあったのかと思うほど便利で、屋外の撮影でも困ることはありません。特筆すべきは柔らかくも豊かなボケ味です。本来は同じような生垣が続いているのですが、こんな風に一部分を大胆に引き立てることが出来ました。
最後は、参道を歩いていると寺院の入り口から強烈な視線を感じ、カメラを向けた一枚です。日も落ちかけかなり暗くなっており、また被写体がほとんど黒という中での撮影。大口径の明るさと、ボディの高いスペックに助けられ撮影することが出来ました。暗部の中に濃淡を感じる階調表現、そしてピント部分の木目のディティールの良さに目を奪われる一枚になりました。
大口径中望遠レンズの黄金時代に生まれた『Ai Nikkor 135mm F2』ですが、その後のオートフォーカス化の波により淘汰されかけた歴史があるそうです。しかし時を経て、MFの愉しさを満喫できる優秀なボディの登場により、その価値が再評価されているAi Nikkor。素晴らしいボケ味は現行レンズにも匹敵するこの一本、是非お試しいただきたいと思います。
※本記事ではプロトタイプ機を使用しているため、製品版と異なる場合があります。
Photo by MAP CAMERA Staff