Nikonが満を持して世に送り出したミラーレスシステムのZシリーズに『Z5』が仲間入りを果たしました。フルサイズの撮像素子を搭載しながら軽量で軽快、手に取りやすい価格も魅力的。そんな待望のボディのさらなる可能性を見るべく、ライカMマウントのスタンダードな単焦点として人気の高い『Carl Zeiss Planar T* 50mm F2 ZM』を『SHOTEN マウントアダプター LM-NZ M EX』を介して装着し、撮影して参りました。
照明が灯り出したところを狙いました。目線より高い場所にある被写体でしたが、チルト液晶を下向けにしながらストレスなく構図を決めることが出来ました。自分で動きながらの画作りを楽しむ単焦点レンズにとってこの取り回しやすさは何よりの味方であると言えます。手軽と言いながら写りに関してはフルサイズセンサーゆえの大きなボケが際立ち、開放気味ながら致命的な収差も見られずレンズの持ち味を活かしています。
ヤマトシジミが花でくつろいでいる所を狙うべく、驚かせてしまわぬよう慎重にカメラを近付けます。今回使用している『SHOTEN マウントアダプター LM-NZ M EX』はヘリコイドが付いておりレンズ純正の最短撮影距離より寄っていけるのですが、『Z5』のグリップの良さに助けられ片手でも難なくボディを保持することが出来ます。ふわりとした写りが蝶の可愛さを引き立てています。
ピントを確実に追い込みたいときはファインダーを覗きじっくりとフォーカスを合わせます。『Z5』の電子ビューファインダーは上位機種同様非常にクリアーでピント面やボケの具合も確実に目で捉えることが出来ます。装飾の施されたダイヤル部分を艶っぽく描写しながら看板は奥に向けてボケを入れる、頭で思い描いた通りに画作りすることが出来ました。
撮影中、短時間ですが大粒の雨に降られてしまいました。水溜まりに撥ねる水滴が作る波紋が美しく、連写した中で形が綺麗なものを選びました。晴れ間では狙うことの出来ない雨天時の数少ない楽しみです。
手すりが折り重なっている風景、なるべくパースが掛からないように正面に構えて無機質な幾何学模様になるようイメージしました。
F8まで絞るとしっかり解像します。周辺の光量落ちも軽減されて隅々までスッキリとしています。
50mmという焦点距離は実に難しいなと常々思っています。ダイナミックな景色も飛び立つ飛行機も向いているレンズが他にある中で、それでも50mmが愛されるのは自分の目に映ったモノから得た感動を、なるべく味付けや誇張することなくそのままに切り取れることではないでしょうか。時が経って写真を見返したときに思い出と共に蘇る、そんな体験をさせてくれるのがこの焦点距離なのかなと思います。
驚くような写真、圧倒するような写真が撮れるわけではありませんが、いつもそばにあって自分の日常を細やかに残していくような、そんな日々を連れ添うのにピッタリな『Z5』と実直な写りの『Carl Zeiss Planar T* 50mm F2 ZM』の組み合わせは、これからフルサイズカメラとMFのレンズに挑戦したいという方にもお勧めです。ぜひ、梅雨が明けて気持ちの良い夏が来るのを待ちながら試してみて下さい。
※記事中の掲載写真については試作機での撮影の為、製品版とは異なります。ご了承ください。
Photo by MAP CAMERA Staff