最高クラスの写真画質を実現させ、プロフェッショナルの現場において中判デジタルの新たな可能性を切り開いた富士フイルムのミラーレスデジタルカメラシステム「GFX」。今回はついにその頂点とも言える1億画素を超える『FUJIFILM GFX100』のレビューをさせていただきます。静音性に優れた最速1/4000秒のメカニカルシャッターに1/16000秒まで対応する電子シャッター。縦グリップ込みでも35mm判デジタル一眼レフのフラッグシップ機のサイズ感に5.5段分の手ぶれ補正機構を搭載。表示倍率0.86倍、約576万ドットの有機ELファインダー。3.2インチのチルト式背面モニターはハイアングル/ローアングルの撮影にも対応。かつてない画素数を誇るカメラでありながら、三脚を必須とせず撮影に臨める「使える1億画素」カメラになっていることに驚きます。
せっかくの1億画素を誇るカメラ、そのスケールに合う被写体と巡り会うために萌ゆる山々へ。まだ少し早いながらも紅葉のタイミングに撮影が叶いました。一部の写真はクリックしていただくとJPEG原寸大を確認できます。JPEGにして1枚100MB相当になる情報量の写真を是非ご覧ください。
広大な景色を『FUJIFILM フジノン GF100-200mm F5.6 R LM OIS WR』テレ端で撮影した1枚。前ボケから撮影位置をイメージいただけますでしょうか。陽のあたる場所と雲の陰のコントラストを見事に表現してくれました。やや霞みがかったコンディションでしたが、右側の山道を拡大してご覧いただくと人が歩いているのが確認できます。絞り値の適切なコントロールなどまだまだ詰めていく要素がそれこそ山のようにあると思いますが、手持ちでの撮影でこれだけ写ります。この写真に感じる「密度」は今まで体験したことのない体験でした。1億画素という数値以上に「写真」としての素晴らしさがあります。
陽の射し加減で刻一刻と変わるコントラスト。雲に遮られて出来た影がちょうど斜めに切ったようなタイミングで撮影しましたが、影のトーンの生々しさに唸ってしまいます。ちなみにこの写真は普段35mm判で撮っている筆者にとっては馴染みのあるアスペクト比「3:2」で撮っています。本来のアスペクト比でないのに約9000万画素相当なのですから凄まじいものです。
筆者は撮影の際にあまりビビッドのカラープロファイルは当てないのですが、RAW現像の際にフィルムシミュレーションの「Velvia」を多用しました。今までの感覚では色が潰れてしまいそうなシーンも『FUJIFILM GFX100』ではその色が深みとして表現されている気がするのです。
水質の綺麗さもあると思いますがまるで浮遊しているかのような画が撮れました。ブルーの発色がとても好きでブルーが多いシーンでは「ASTIA」をよく選びます。1億画素が詰め込まれたセンサーの画素ピッチは3.8μm(GFX 50Rは5.3μm)。いくら裏面照射型センサーとはいえ、高感度のノイズ耐性はあまり強くないのでは?と思っていたのですが、ISO感度4000という高感度でありながらノイズを感じさせません。原寸大に拡大表示するとノイズは見えるのですが、こうして写真として見る上では全く気にならないのは驚きました。
実は記録用として何気なく撮っただけの1枚なのですが、あとで写真を見返した時にこの空間の奥行き感や描写に目を奪われ、採用させていただきました。『FUJIFILM フジノン GF23mm F4 R LM WR』はGFレンズとして最も広角なレンズです。ビシッと整った線を見てもわかるように歪みも少ないので高画素が活きる『GFXシリーズ』ではぜひ一緒に使っていただきたいレンズです。
日が沈む少し前の時間。展望台のある地点に。眼下に広がる街の景色の中に一際目立つ建物が夕日を浴びて最高のアイキャッチとなりました。建物の窓の数が数えられるほどの解像力、空のグラデーションも実に見事です。この後も月が浮かぶ暮れの空を撮影していたのですが、空のグラデーションの表現にうっとりしてしまいました。『FUJIFILM GFX100』を手にしたらぜひ空を撮ってみてください。その瞬間の美しい空と階調はあなただけのものです。
「ようこそ、パノラマの世界へ」
このアスペクト比を見て懐かしさに頰が緩んだユーザーもいるでしょう。1990年代フジフイルムは「TX-1」「TX-2」でパノラマの世界を表現しました。「TX-1」「TX-2」は実際にフィルムの面積を多めに取った「本物のパノラマカメラ」、『FUJIFILM GFX100』では「65:24」というアスペクト比でそれを再現しました。上下を切り取っただけのはずですが、実際に映った画を見ていただくとわかるようにとても拡がりを感じます。しかも1億画素のおかげでこの縦横比でも約5000万相当になるので大判プリントにも対応が可能です。Xシリーズでもやろうと思えば出来たアスペクト比かもしれませんが、しっかりとしたクオリティで出そうというメーカーとしての物作りへの真摯な思いを感じます。
寄り添うように咲くコスモス。茎の解像感や発色の透明度、ボケ味に至る全ての要素にラージセンサーの凄みを感じます。ちなみにこの1枚は『FUJIFILM フジノン GF110mm F2 R LM WR』で撮影しています。ラージセンサーではレンズの焦点距離よりも約0.7倍の焦点距離となるので35mm判としては87mm相当の画角になります。センサーサイズ(判の大きさ)と1億画素による被写界深度の浅さから生まれる立体感、ピント面の厚み。この写りは一度味わってしまうと病み付きになってしまいます。あくまで二次元でしかないはずの写真に感じる立体感や臨場感のようなものが、このカメラには存在するのです。
早朝、宿から少し歩きながら撮った光が美しかった1枚。今回メインに使った『FUJIFILM フジノン GF45-100mm F4 R LM OIS WR』の写りは本当に素晴らしく、この画も道の奥まで解像の綻びがありません。約半分ほどにリサイズしていますが、描写が細かすぎてサムネイルでは解像しきれないほどの写り。ぜひ拡大してみてください。
ただ椅子を切り取るだけでパノラマの画角はどこか物語性を醸し出す要素があります。F4通しのレンズで薄暗い室内を撮るにはどうしてもISO感度を上げずには撮れませんがノイズ耐性を信じて撮影することが出来ます。この1枚もISO2500ほどまで上げていますが、模様の細部の綿密な描写は損なわれていません。
パノラマ画角で撮るのならば、やはりこういったダイナミックな風景を撮りたいものです。連なる山脈のコントラストを薄っすらと表現出来る『FUJIFILM GFX100』の階調の豊かさ。フィルムメーカーらしい色の出し方やノイズ処理など撮って出しのJPEGの仕上がりも魅力的なのですが、出来れば豊かなRAWデータから自分自身の表現を見つけながら楽しんでいただきたいです。
富士の頂。
数年前、好奇心で登った富士の山。途中で休憩しながら見上げた夜空の星、山道沿いに歩く人人で繋がるヘッドライトの灯。その道中もとても楽しく、印象に残っています。しかしヘトヘトになりながらやっとの思いで夜明け前に登頂して拝んだ朝日はやはり格別のものでした。
三脚がなくても撮影できる「使える1億画素」を目指した『FUJIFILM GFX100』は中判カメラとして素晴らしい仕上がりです。それでも1枚200Mを越えるRAWファイル、35mm判フルサイズカメラとのボディサイズの違いなどネイチャーやスタジオでの本格的な撮影をメインにするカメラマン以外にはややポテンシャルを持て余してしまう部分があると思います。
ただ二度と戻らない貴重な瞬間を世界最高峰の写りで残したい。その願いを叶えるカメラとして『FUJIFILM GFX100』の選択を後悔することはおそらくないでしょう。これからもカメラの技術は進化し続ますが、現時点『FUJIFILM GFX100』は間違いなく最高峰の写真画質を誇るカメラだと断言できます。まさに雲海を抜けたような1億画素の突き抜けた写りの世界、ぜひご自身で体験してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff