【マップカメラ情報】キヤノン ハイアマチュアモデル3機種の魅力を探る
ハイアマチュアモデル3機種の特徴は、それぞれのセンサーサイズの違いだ。35mm判フルサイズのEOS 5D Mark IIと、APS-CサイズのEOS 7D、EOS 60Dとなっている。画素数・表現力・汎用性・価格など、それぞれの特徴を探りEOSハイアマチュアモデルの魅力を探っていこう。
ハイアマチュアモデル3機種の比較
フルサイズ機は風景向けと言われる事があるが、APS-C機であるEOS 7DやEOS 60Dは画素数が1800万画素もあり、画素数でフルサイズに劣ると感じる事は無くなったように思える。画素数以外で風景向けと定義される理由がもしあるとすれば、広角レンズがその焦点距離のままで使える点だろうか。確かに、こればかりはキヤノンの広角単焦点レンズラインナップをみるかぎり、フルサイズ機には太刀打ちできない。
とはいえAPS-C機専用の高画質な広角ズームレンズなどもメーカー純正以外に、サードパーティーからもラインナップされ様々な選択肢が増えた今、この差も埋まって来ているのではないだろうか。
そこで、今回はこの3機種のセンサーサイズによる特徴と、カメラとしての魅力はどこにあるのかをチェックしてみたいと思う。デジタルカメラは新製品が出るたびに進化してきているが、次の機種を待っている間にも今年の夏も終わり秋を迎えようとしている。被写体はこちらの都合を待ってくれない。だからこそ、今必要なカメラをしっかりと見極めて、ベストなカメラを手にして最高の写真を残して欲しいと思う。
EOS 5D Mark II、EOS 7D、EOS 60Dそれぞれのスペック比較
EOS 5D Mark II | EOS 7D | EOS 60D | |
---|---|---|---|
センサーサイズ | フルサイズ(約36×24mm) | APS-Cサイズ(22.3×14.9mm) | APS-Cサイズ(22.3×14.9mm) |
有効画素数 | 約2110万画素 | 約1800万画素 | 約1800万画素 |
記録媒体 | CFカード(タイプI、II準拠、UDMA対応) | CFカード(タイプI、II準拠、UDMA対応) | SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカード |
ファインダー視野率 | 上下/左右とも約98% | 上下/左右とも約100% | 上下/左右とも約96%(アイポイント約22mm時) |
ファインダー倍率 | 約0.71倍(50mmレンズ・∞・-1m-1 ) | 約1.0倍(50mmレンズ・∞・-1m-1 ) | 約0.95倍(50mmレンズ・∞・-1m-1) |
オートフォーカス測距点 | 9点、及びアシスト測距点6点 | 19点(全点クロス測距) | 9点(全点クロス測距) |
AF微調整 | AFマイクロアジャストメントにより対応 | AFマイクロアジャストメントにより対応 | なし |
測光方式 | 35分割TTL開放測光 | 63分割TTL開放測光 | 63分割TTL開放測光 |
シャッター速度 | 1/8000~30秒、バルブX=1/200秒 | 1/8000~30秒、バルブX=1/250秒 | 1/8000~30秒、バルブストロボ同調最高シャッター速度=1/250秒 |
内蔵ストロボ | なし | リトラクタブル式、オートポップアップストロボガイドナンバー12(ISO 100・m) | リトラクタブル式、オートポップアップストロボガイドナンバー約13(ISO100・m) |
連続撮影速度 | 最高約3.9コマ/秒 | 最高約8コマ/秒 | 最高約5.3コマ/秒 |
連続撮影枚数 | JPEG:約78枚RAW:約13枚RAW+JPEG:約8枚 | JPEGラージ/ファイン:約94枚RAW:約15枚RAW+JPEGラージ/ファイン:約6枚 | JPEGラージ/ファイン:約58枚RAW:約16枚RAW+JPEGラージ/ファイン:約7枚 |
動画撮影 | MOV(画像:H.264、音声:リニアPCM)記録サイズ:1920×1080(Full HD)、640×480(SD) | MOV(画像:H.264、音声:リニアPCM)記録サイズ:1920×1080(Full HD)、1280×720(HD)、640×480(SD) | MOV(画像:H.264、音声:リニアPCM)記録サイズ:1920×1080(Full HD)、1280×720(HD)、640×480(SD) |
液晶モニタ | TFT式カラー液晶モニター3.0型/約92万ドット(VGA) | TFT式カラー液晶モニター3.0型/約92万ドット(VGA) | TFT式カラー液晶モニターワイド3.0型(3:2)/約104万ドット |
カメラ内RAW現像 | なし | なし | あり |
クリエイティブフィルター | なし | なし | ラフモノクロ、ソフトフォーカス、トイカメラ風、ジオラマ風 |
バッテリー撮影可能枚数 | ファインダー撮影:常温(23℃)約850枚/低温(0℃)約750枚ライブビュー撮影:常温(23℃) 約200枚/低温(0℃)約180枚 | ファインダー撮影:常温(23℃) 約800枚/低温(0℃)約750枚ライブビュー撮影:常温(23℃) 約220枚/低温(0℃) 約210枚 | ファインダー撮影:常温(23℃) 約1100枚/低温(0℃)約1000枚ライブビュー撮影:常温(23℃) 約320枚/低温(0℃) 約280枚 |
フルサイズ・フルHD動画で革命を起こすEOS 「EOS 5D Mark II」
前機種である「EOS 5D」が発売されたのが2005年。当時は、高嶺の花と思われていた35mm判フルサイズのカメラを、手に届く価格で発売したことが革命的だった。それから3年後、キヤノンはまた革命的出来事を起こす。2008年11月に、35mm判フルサイズのセンサーで動画撮影を可能とした「EOS 5D Mark II」を発売。この出来事は写真業界だけではなくTVや映画を制作する映像業界までを動かす、EOS 5D Mark II以前と以後では、プロモーションビデオを含む映像作品の表現・クオリティーが違うことがわかる。10年、20年後このことを蘊蓄としても語れるほどの大きな転機だ。
ボディはマグネシウム合金製で、フロントカバーとグリップの一体成形によるボディ剛性がある。ストロボは内蔵されていないが、ペンタ部の隙間のない一体感のある滑らかなデザインがこれにより実現されている。
今回取り上げるハイアマチュアモデル3機種の中では、もっとも発売時期が早いこともあり動画撮影専用ボタンは持たないが、ライブビュー中にSETボタンを押すだけで動画を撮影できるので特に不自由に感じることはない。
その動画機能だが、フルサイズセンサーならではの被写界深度の浅い「動く写真的」な映像や、豊富なEFレンズを使用した個性的な映像が他にはない強みとなっている。世界各国でも使われていることもあり、プロ用のムービー撮影用の機材も充実している。
静止画も動画も最高画質で残せるEOSは、EOS 5D Mark II以外存在しない。長く使っていける一台だ。
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防塵防滴・秒間8コマのスペシャルなEOS 「EOS 7D」
2008年に発売されたハイアマチュアモデル「EOS 50D」とフラグシップモデル「EOS-1Dシリーズ」の間を埋めるべく開発されたのが「EOS 7D」だ。
新開発の19点AFは、それまでのハイマチュア機とはワンランク上の性能を誇る。実際に使用してみると、今までの9点のAF中央付近にAFフレームがなく、動体撮影時には不安になるシーンが多かったが、EOS 7Dのまんべんなく配置されたAFフレームは、動体予測時に威力を発揮する。
この専用のAF機能と秒間8コマの高速連写により、コンパクトなボディながらプロ機に匹敵する性能を持ち合わせた、コストパフォーマンスの高い魅力的なカメラに仕上がっている。
EOS 7Dのセンサーサイズは、35mm判換算で約1.6倍のAPS-Cサイズとなるが、望遠レンズを用いた撮影にはその事がメリットとなる。例えば、200mmのレンズは約320mmに、300mmのレンズは約480mmに、600mmのレンズはなんと約960mm相当のレンズとなり、今まで考えられなかった超望遠撮影をレンズのF値(明るさ)そのままで行うことができるのだ。視野率100%を実現したファインダーも、この超望遠撮影時のフレーミング時に役立つ。
EOS 7Dのフルハイビジョン動画撮影は、この超望遠撮影時にも活かせる。野鳥や野生動物の生態記録など、今までは静止画でしか残せなかった美しく大きなボケのある高画質レンズの映像を動画でも記録できる。
EOS 7Dは、APS-Cサイズセンサーのメリットを活かした望遠撮影、高速連写、構成のオートフォーカスなどアウトドア撮影、スポーツ撮影用途に威力を発揮する。また、これら屋外撮影の天候変化に対応すべく防塵・防滴構造となっている点もEOS 7Dの強みだ。
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バリアングル液晶で新しいスタイルを提案するEOS 「EOS 60D」
「EOS 50D」の後継となる「EOS 60D」は、ちょっと変わったモデルだ。前機種まではマグネシウム合金製のボディだったのに対し、エンジニアプラスチック製のボディとなり、EOS二桁機はEOS 7Dの登場で少しエントリーモデル寄りとなった。
とはいえ、メニュー周りや電子ダイヤル・サブ電子ダイヤルによる操作系は継承されているので、極端に機能を省略した訳ではない。イメージセンサーはEOS 7Dと同等のものとなっており、写りは全く同じと言っていいだろう。
前機種やEOS 7Dに無い機能も搭載されている。その特徴の一つが可動式の液晶モニターの搭載と、写真をアートに加工するクリエイティブフィルターの搭載だ。
可動式の液晶モニターは、ライブビュー撮影の自由度が上がる画期的な機能だ。EOS 60Dは、手持ち撮影や三脚撮影時の使い勝手が良い。可動式の液晶モニターのメリットは、液晶画面を楽な姿勢で見られるだけではない。今まで見た事もないアングルからの撮影、その撮影でのしっかりとしたフレーミングによる偶然ではなく必然の写真撮影・動画撮影が可能となっている。ボディの質量が電池を含めて約755gにおさえられている点も、手持ちライブビュー撮影時に実感できるありがたさだ。
可動式の液晶モニターを搭載することで背面左側にあったボタン類が右側へ移動する事となったが、殆どの操作を右手親指で行えるので実は使い勝手が向上している。これらのハードウェアの変更により、EOS 60Dは撮影する事に特化したカメラに進化している。
クリエイティブフィルターが搭載されることで、もっと写真を楽しむことができるようになった点も素晴らしい。クリエイティブフィルターは、撮影後のJPEG画像・RAW画像に適用させる機能だが、その事が実はメリットでもある。各種フィルターを複数掛けすることができるので、凝った絵作りもできる。
EOS 60Dは、ハイアマチュアモデル3機種のなかで一番個性が強くカメラとして一番面白いと感じた。
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EOS ハイアマチュアモデル3機種まとめ
発売時期も関係あるが、カメラとして一番スタンダードなEOS 5D Mark IIだが、機能がシンプルな分全体を把握しやすく使いやすい。そして、なんと言ってもフルサイズ2110万画素から得られる写真は圧巻だ。絞り開放のボケから絞り込んでカッチリ写し出される表現力の多彩さは、APS-C機(EOS 7D、EOS 60D)では太刀打ちできない。
EOS 5D Mark IIの個性を一言で言い表すとすると「記録」ではないだろうか。フルサイズセンサーによる、多彩な写真の表現が可能な「写真好き」のためのカメラだと言えよう。
では、APS-C機の良さとは何だろうか?!まずは、レンズシステムのコンパクト化が挙げられる。EF-Sレンズシリーズやサードパーティー製のAPS-C機用のレンズは小さくて軽い点が特徴だ。広角レンズ、F2.8通しのズームレンズ、望遠ズームレンズなどコンパクトで尚且つ価格も抑えられている。
センサーサイズが小さいことでレンズをコンパクトにできる以外に、焦点距離が約1.6倍となるという特性を活かした望遠撮影にも向いている。例えば、EF 70-200mm F2.8 Lレンズの場合は、35mm判換算112-320mm F2.8のズームレンズとなる。300mmの焦点距離でもF2.8の明るさと、EOS最新機種の高感度撮影を合わせれば、動きのピタっと止まったスポーツ撮影も可能だ。
このAPS-Cサイズセンサーを、もっとも活かせるEOSがEOS 7Dだ。新開発の19点のAFセンサーと、秒間8コマの高速連写でシャッターチャンスを逃さない。EOS 7Dの個性は「可能性」と感じた。ハイアマチュアモデルでありながらプロ機を凌駕する性能を持ち、様々な用途に使用できる。APS-C機のメリットと連写機能を活かした、ハイアマチュア向けの最高峰と言えるだろう。
EOS 60Dは、EOS 7Dのようにスポーツ撮影用途にも使えるようなプロ向けのスペックではないが、かといって極端に劣る点もない。クリエイティブフィルターなど、写真を楽しむための機能が搭載されており幅広い層が満足できるように作り込まれている。
そしてなんと言っても、EOS 60Dの特徴であるバリアングル液晶モニターの使い勝手の良さだ。残念な事にこの良さは、実際に使ってみるまでわからないのが残念だ。
フルハイビジョン撮影が可能となったEOSムービーは、三脚を使って良い映像を撮りたいというもの。手軽に可動式の液晶モニターで、構図と露出を確認して撮影できる点がEOS 60Dの強みだ。
EOS 60Dの個性を一言であらわすとすれば「実」だと感じた。撮影するにあたって必要な機能すべてが入っている贅沢な全部入りのカメラだ。コンパクトデジカメやエントリー一眼レフ機からのステップアップというイメージが強いEOS 60Dだが、その実力は写真や動画の作品作りをしたいクリエイター向けのバランスの良いカメラだ。
機材レポートリンク
EOS 5D Mark II →キヤノン EOS 5D Mark II ファーストインプレッション
→キヤノン EOS 5D Mark II ISO感度別比較レポート
EOS 7D →キヤノン EOS 7D ファーストインプレッション
EOS 60D →Canon EOS 60D レポート