フィルムカメラ全盛期からニコン機を愛用していた筆者。当時Fマウントのカメラといえば不変のFマウントと言われその長い歴史から多くのレンズを楽しむことができたものの、フランジバックの長いFマウントのボディにはマウントアダプターを介して他社マウントのレンズが使えないという不便さを感じることもありました。
ミラーレスカメラが主役になった現在、ニコンのカメラはこれまでの鬱憤を晴らすかのように他のどのメーカーよりも短いフランジバックを採用し、Nikon Zシリーズはマウントアダプター遊びには最強のカメラになったのです。
今回はそんなNikon Zシリーズの中から高精細かつ小型軽量ボディの『Z7II』を使用し、マウントアダプターによる他社マウントレンズとの相性を試してみましたのでぜひご覧ください。
悩んだ挙句レンズはSONY Eマウント用の『Carl Zeiss Batis 40mm F2 CF』を。そしてカメラとレンズの仲をとり持つアダプターには『TECHART 電子マウントアダプター TZE-02』をチョイスしました。
この電子マウントアダプターは露出などのExifデータの記録はもちろん、AF撮影も可能にしてくれる優れものです。
撮影日はちょうど七夕の頃。『Z7II』と”7″の名を持つモデルには最適な被写体なのではと思い、有名な縁結びの神社に向かいました。
女性に人気の神社だけあって手水舎も沢山の花で彩られていました。さっそくカメラを向けます。
大きな屋根の下、若干暗めのシチュエーションではAFの反応は若干遅め。それでも一回捉えてしまえば多少アングル変更のためにカメラを振ってもしっかり付いてきてくれました。
写りはさすがツァイスと言わざるをえません。透明感が高く、色のりもしっとりとしていて好印象です。
カメラを趣味にしていると、ライカやツァイスなどドイツブランドのレンズがどうしても気になってしまいます。実際Fマウントを愛用していた時もMilvus等のツァイスレンズを使用していました。
SONY αシリーズにツァイスブランドのレンズがラインアップされ、CareZeiss自体からもLoxiaやBatisレンズが登場。ソニーならツァイスレンズがAFで使えるのかと羨ましく思ったものです。
そんな憧れだったものがアダプターを介してニコン機でも実現。ピント合わせが多少遅くてもAFが使えるということに勝る感動はありません。
レンズは8群9枚からなるDistagon設計ですが、鏡筒がプラスチックで作られているため驚くほど軽量。『Z7II』とのバランスも良く本当はニコン用に設計されたのではと思える程です。
ボケも綺麗です。開放の大きいボケはもちろんですが、少し絞って得られる程よい遠近感も良い感じです。
線の細い松葉も一本一本しっかり描写しているのが分かります。ソニー用のレンズを半ば強引に装着している訳ですから多少の画質劣化は覚悟していましたが、そんな気配は一切感じさせません。『Z7II』の高い解像性能を存分に引き出している印象です。
噴水を最速シャッターで狙うと、期待通り水の雫をピタリと止めることができました。カメラ側の設定通りレンズもしっかり動いてくれておりアダプターを介したことによる不便さはありません。
夏の風物詩とも言える朝顔。4年ぶりに市が開催されるとの事なので足を伸ばしてみました。
お昼を過ぎていましたので朝顔は少し元気がありませんでしたが、しっとりとした花びらの質感までしっかり捉えてくれます。
風に揺れる風鈴。こちらは歩きながら液晶モニターのタッチシャッターで捉えました。
撮影も後半に入る頃にはマウントアダプターを介していることを忘れてしまうほど、違和感なく操作できてしまう優れたアダプターです。
炎天下の中、かなり歩いたので甘味屋さんで小休止。運ばれてきた美味しそうなかき氷に思わず近づいてしまいます。
本レンズは24cmまでの近接撮影が可能なのでテーブルフォトにも重宝します。40mmというやや広めの画角と近接性能により画角の自由度はかなり高く感じました。
1日フルに撮影を満喫。掲載写真は少しですがシャッターは結構切りました。それでも『Z7II』のバッテリーは余裕あり。ニコン機のスタミナ性能には毎回ながら驚かされます。
とは言え、それでもニコン純正レンズを使用している時よりはバッテリーの目盛りの減り方が気持ち早く感じました。旅行など長期の撮影に出かけるなら予備バッテリーのご準備をおすすめします。今回使用した『Z7II』のようにUSB給電機能が付いているとさらに安心です。
少し丸みを帯びたデザインのレンズはニコンのボディにもマッチします。アダプターによる出っ張りも2mm程しかないため、レンズを装着してしまえばアダプターの存在も感じさせません。
個人的に嬉しかったのがレンズに搭載さている液晶ディスプレー。ボディの電源を入れるとZEISSの文字が浮かび上がり、その後距離計などが表示されます。
ニコンレンズで言えば大三元ズームや「Z 50mmF1.2 S」などと似た仕様で、Zシリーズの最高峰レンズを使っているような気分にさせてくれました。
Fマウントカメラを使用していた際に感じていたツァイスレンズとの相性の良さ。それはZマウントに変わっても変りませんでした。むしろソニー用レンズでこれだけの好相性を見せてくれたのだから驚きです。
シグマやフォクトレンダーなど少しずつZマウントのレンズが増えてきましたが、Fマウントの時と比べると未だ物足りなさを感じるレンズラインナップ。これを補う意味でも今一度アダプターに注目してみてはいかがでしょうか。