カメラボディにマウントの異なるレンズを使いたい時は何を優先すべきなのでしょう。画質や見た目など優先順位は十人十色。決まった正解などはないのですから、思い切って好きなように組み合わせることが結果的に機材を愛でたり撮影を楽しむことに繋がって行くような気がします。ならばと、画質も見た目も満足できるような組み合わせにしてみました。
「優れた画質」。Carl Zeissのレンズに対するイメージとして真っ先に思い浮かぶ言葉ではないでしょうか。あらゆる点で最高の基準を誇るT*レンズシリーズの中から今回は『Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 ZM』を『Nikon Z fc』に装着して撮影に臨みました。使用したマウントアダプターは『Megadap MTZ11』。AF駆動モーター搭載の電子マウントアダプターです。「MFレンズをAF動作で使用できたら…」と考える人は多いはず。その思いを実現化した、まさにかゆい所に手が届くかのような一品です。これらの機材で撮影した写真をご覧ください。
『Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 ZM』を使用して感じたことは被写体が上品に写る、ということです。とある操舵室内部を撮りましたが金色に光る機器の重厚さが落ち着いた雰囲気を高めてくれています。『Nikon Z fc』のピクチャーコントールのニュートラルでは心地よい色彩の表面に潤いをプラスしてくれる印象を持ちました。Carl ZeissもNikonも上品な質感を持ち合わせているレンズが多いですから相性は抜群なのでしょう。
一目見て年代物と分かるカメラが展示されていました。大きな筐体に蛇腹。初めて見るのにノスタルジーを感じるのですから不思議なものです。現在我々が使用しているカメラのご先祖様といったところでしょうか。手元で構えているデジタル機器が満載されているカメラを見ると人が歩んできた技術の歴史を感じられずにはいられません。
船で上陸できる島へ移動しました。自然豊かな場所へ行くとまず目につくのは水や海の綺麗さです。そして水面に反射した光はとても幻想的。露出をハイキーにして透明感のある写真に仕上げました。
この日は朝から空一面が雲で覆われていたのですが、それが太陽光を優しくしてくれるディフューザーの役割を果たしてくれました。石壁の間にぽつりと顔を覗かせた植物が程よく和らいだ光に照らされ絶好の被写体へと変わります。影の具合、色乗り共にしっとりとした雰囲気に写りました。
先ほどまで撮影をしていた島の姿を写真に収めました。揺れる船上ではAF駆動のマウントアダプターが頼もしく、落ち着いて撮影することができます。この頃になると太陽も姿を現し、彩り鮮やかな光景に移り変わりました。視界に写る島の姿が徐々に小さくなるにしたがって名残惜しさを感じてしまいます。
『Megadap MTZ11』をつけた姿はその起動音もあってメカニカルな印象。個性的な外見で少しばかりの優越を感じることもできます。それでいてMFレンズをAF動作で使うことができるのですから魅力的なガジェットであることは間違いありません。今後AF駆動モーター搭載の電子マウントアダプターのピント合わせの精度がより進化していけば更に普及をしていくのだろうなと思いました。大袈裟な話ですが、そのフォルムや性能を語る上で「伝統的な~」と形容詞のつく『Nikon Z fc』と『Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 ZM』をモダンな『Megadap MTZ11』が橋渡しをしているというのはボディとレンズを組み合わせる際の新たな選択肢として未来的なものを暗示しているようにも感じます。
今回使用した機材は興味本位に動かされて選んだ分も大いにあるのですが、その結果として得られたのは想像外、偶然性の楽しさを感じることでした。自らの趣向やスタイルは一度決めてしまうとそれを崩すことは容易くはありません。しかしながら少しばかりの好奇心がそれを打破し、今までとは違う写真の表現方法を生むこともあるように思います。ひとつのマウントアダプターを介してボディとレンズを繋ぎ合わせる。それは単純なことながらカメラと写真の魅力を違う角度から楽しむことに他なりません。今後ともマウントアダプターを介しての楽しさを追及して行くMap × Mountadapterを何卒よろしくお願いいたします。