『FUJIFILM GFX100S』と同時に発売された『FUJINON GF80mm F1.7 R WR』。GFXシリーズのレンズの中でも特に人気の高い『FUJINON GF110mm F2 R LM WR』と同等の写りをするということで、大注目されていたレンズです。より使いやすくなった画角とコンパクトさは『FUJIFILM GFX100S』ともピッタリな組み合わせでしょう。35mm判換算63mm相当の焦点距離とは思えないボケ量と、うっとりするような滑らかさ。それでいて開放絞りからピント面は驚くほどシャープ。9群12枚の中に非球面レンズ1枚、スーパーEDレンズ2枚を惜しみなく使い、フレアゴーストさえ芸術的表現に変えてしまう描写力。早くもGFXシリーズのベストオブレンズになりそうな予感がする本レンズ、その写りをぜひご覧ください。
海沿いを走る電車に急いで飛び乗り、空いていた席に。乗り降りを繰り返す車内。ちょうど海沿いを走る中、窓から漏れる光に照らされる車内があまりに美しかったため中間の扉にピントを合わせて撮影。前ボケ後ろボケとボケの見本市のような1枚ですが、どれ一つ嫌な感触はなくこの写真を構成するための美術点になっています。窓から入り込むオーバー気味な光の受け方も完璧ではないでしょうか。早くも『FUJINON GF80mm F1.7 R WR』の実力を見ることができました。
少し気分が落ち込んでしまいそうになる今の世の中。いつもはあまり見に来ないのですが、早めに咲く力強い桃色の桜を見にきました。青く心地よく晴れた一日、あえて切れ込みを入れたような光の下を撮影してみたところ、まるで中望遠レンズのような立体感とシャープな解像力を見せてくれました。
岩肌の質感がどれだけ写るのか少し絞って撮ってみたところ、全体の解像の質が抜群に良くなりました。絞る必要性をあまり感じないレンズではありますが、スナップネイチャーで使うにももってこいのレンズです。
至るところで目撃される地元猫。レンズを交換しながら撮影していても微動だにせず時折こうやって横目で見てきます。誤って手元から缶を落とした時、その音を餌が貰えるものと勘違いしたのか、物凄いスピードでこちらに寄ってきました。この地域や下町の猫と人の距離感はとても心地良いものです。開放絞りなのでピント面は極薄ですが、胸や足のモコモコ感がしっかり分かる優れた表現力です。
ほぼ最短撮影距離で撮影した室内での1枚。アンティークチェアの生地の質感が見事に描写されています。トロけてしまったかのようなボケ味が特徴的だった為、選びました。
出かけた時は青空が広がっていたのに、待ち合わせた途端暗雲が立ち込めてきたので「雨男」という称号を授かりました。暮れかけに少しの間陽が差し込んだ時にガラス張りのビルをレフ代わりに撮った1枚。スムーススキンエフェクトを「強」に設定した撮って出しです。その後少しのレタッチをする必要があったとしても、大幅な時間短縮に繋がる自然で、素晴らしいエフェクトだと思いました。ボケや描写の一つ一つが被写体を引き立てる素晴らしいレンズです。
キラキラと輝く水面の少し奥にピントを合わせました。このレンズの決して硬くなく柔らかい写りが撮る人の感情にひと結びで繋がるような、不思議な体験です。
旅情。そんな言葉が浮かぶ、このレンズで世界を切り取るたびにまるで長い旅をしているかのような気持ちになります。
最初はこの流木を目線から撮影したのですが、ふと思い立ってローアングルで撮影したときのフレアがかった描写が美しくこちらを採用しました。撮影するのも忘れ陽が沈むのをただ座りながらじっくりと見たくなる光景でした。
以前はスケートボードの練習をする人たちで賑わっていた場所。無人の練習場が夕暮れに浮かぶ姿が寂しくてファインダーを覗いたところ、フェンスが前ボケになっていてそのまま撮影しました。前ボケにここまでの美しさを感じたことは今まであまりなかったかもしれません。基本的に「NOSTALGIC Neg.」を使用しましたがこのレンズの柔らかくも解像感の高い描写は「NOSTALGIC Neg.」の魅力をとてもうまく引き出してくれていると感じました。「NOSTALGIC Neg.」もぜひ体感していただきたいフィルムです。
どんな旅路も一緒に。
ラージフォーマットを日常的に持ち歩く、そんな日々がこんなにも早く来るなんて誰が想像したでしょうか。これからは持ち歩けるのです、なんてことない日常にも果てしない旅路にも。
誰に問われるわけでもなく、写真を撮る人たちであれば一度は考える「最高の一本」。このレンズはその最高の一本に足り得るレンズだろうなと思いました。これからも続く旅路の中、どんな風に日々を残していくのか。いきたいのか。最初は少しこの世界に飛び込むには勇気が必要かもしれません、けれどその選択が必ず素晴らしい形となって返ってくると思います。光あふれる世界をぜひこのレンズで残してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff